夜中に突然「足がつる」——こむら返りはなぜ起こる?
眠っていたのに、ふくらはぎが急に石のように固まって激痛で目が覚めた——そんな経験、ありませんか? いわゆる「足がつる」「こむら返り」は、医学的には筋肉のけいれん(筋痙攣)と呼ばれます。突然、自分の意思とは無関係に筋肉がギュッと収縮し、強い痛みを伴うのが特徴です。
多くは特に心配のないものですが、何度も繰り返す場合は、体の水分バランスやミネラル不足、飲んでいる薬、あるいは隠れた病気が関わっていることもあります。この記事では、こむら返りが夜に起こりやすい理由から、その場での対処法、予防ストレッチ、繰り返すときのチェックポイントまでをわかりやすく解説します。
こむら返りってどんな状態? 基本をおさえよう
こむら返りの主な特徴はこちらです。
- 続く時間は数秒〜10分程度
- ふくらはぎに起こることが最も多く、足の裏や太ももに出ることも
- けいれんが治まったあとも、最大24時間ほど筋肉のだるさや痛みが残ることがある
- 中高年に多いが、若い人でも起こる
よくある原因として挙げられるのは、「特にはっきりした理由なく夜間に起こる良性のけいれん」と「運動中・運動後に起こるけいれん」の2パターンです。
なぜ夜に起こりやすいの?
英国の公的医療機関NHSによると、脚のけいれんはいつでも起こりうるものの、多くの人は夜間や安静にしているときに経験すると説明されています。また、MSDマニュアル家庭版では、睡眠に関連する脚のけいれんはふくらはぎや足の筋肉に起こりやすく、そのとき足や足の指が足の裏側へ曲がるとされています。
けいれんの起こりやすさや重さを増す可能性があるとされている要因はこちらです。
- ふくらはぎの筋肉の柔軟性不足(ストレッチ不足・運動不足・むくみの繰り返しなど)
- 脱水
- 血液中の電解質(カリウム・マグネシウム・カルシウムなど)の低下
- 神経の病気や甲状腺の機能低下
- 特定の薬の使用
- 長時間座ったままでいること
- 加齢・妊娠後期
「寒いからつった」と感じる方も多いかもしれませんが、寒さ自体を直接の原因として挙げた医学的な資料は見当たりません。ただ、寒い季節は体を動かす機会が減りがち。「ストレッチ不足」「運動不足」「長時間の座りっぱなし」は、季節を問わず見直しやすいポイントです。
つった!そのときの対処法3ステップ
けいれんが起きたら、けいれんしている筋肉をゆっくり伸ばすのが基本です。慌てず、次の3つを試してみてください。
- つま先を引き寄せる:手で足やつま先をすね(上方向)へゆっくり引っ張ります。ふくらはぎが伸びるのを感じながら行いましょう。
- 立って体重をかける:立ち上がり、つった側の脚に体重をかけると和らぐことがあります。夜中は暗いので、壁や家具に必ずつかまって。
- さする・温める:マッサージや温かいタオル・入浴で温めると、痛みが和らぐことがあります。
多くのけいれんは何もしなくても自然に治まります。焦らずゆっくり対処しましょう。
繰り返さないための予防ストレッチ&生活習慣
MSDマニュアル家庭版で予防に役立つとされている習慣はこちらです。
- 食後すぐの激しい運動を控える
- 運動の前や寝る前にふくらはぎをストレッチする
- 運動後に十分な水分(カリウムを含むスポーツ飲料なども◎)をとる
- カフェイン(コーヒー・チョコレートなど)を控えめにする
- 禁煙する
- 市販の鼻づまり薬に含まれる神経刺激成分を避ける
寝る前の「ランナーストレッチ」のやり方
ふくらはぎの予防ストレッチとして定番なのが「ランナーストレッチ」です。
- 壁に手をついて立ち、片脚を前に出して膝を曲げ、後ろの脚は膝を伸ばす
- 両足のかかとを床につけたままにする
- 前の膝をさらに曲げ、後ろの脚のふくらはぎが伸びるのを感じたら30秒キープ
- これを4〜5回繰り返し、反対側も同様に
NHSも「ふくらはぎのストレッチを習慣にするとけいれんを減らせる可能性がある」と説明しています。ただし完全に防げない場合もあります。また、再発予防目的のサプリメントや薬については有効性が証明されていないものも多く、副作用のリスクもあるため、自己判断で始めるのは避けましょう。
繰り返すときに考えたい7つの原因
ストレッチを続けてもこむら返りが繰り返す、回数が増えてきた、という場合は、次のような背景がないかを確認することが大切です。
① 脱水・体液の喪失
嘔吐・下痢・大量の汗で水分と電解質が失われると、けいれんが起こりやすくなります。
② 電解質の低下
カリウム・マグネシウム・カルシウムが低くなる原因には、一部の利尿薬(尿を増やす薬)、過度の飲酒、ホルモンの病気、ビタミンD欠乏、妊娠後期などがあります。
③ 薬の影響
血圧の薬(利尿薬など)、気管支拡張薬(ぜんそくの薬)、一部のコレステロールを下げる薬、経口避妊薬、睡眠薬・抗不安薬などが原因になることがあります。また、アルコールを急にやめたことが一因になる場合も。「この薬が原因かも」と思っても、自己判断で服用をやめるのはNG。必ず処方した医師や薬剤師に相談してください。
④ 甲状腺機能低下症
甲状腺の働きが不十分になった状態で、寒さへの耐えられなさ・体重増加・皮膚の乾燥などの症状を伴うこともあります。
⑤ 腎臓の機能低下
腎臓の働きが落ちるとカルシウムやマグネシウムのバランスが崩れ、けいれんが起こりやすくなります。透析直後にけいれんが起きることもあります。
⑥ 糖尿病による神経の障害
血糖コントロールが長期間うまくいっていない場合、末梢神経(脳や脊髄以外の神経)が障害されることがあり(末梢神経障害)、こむら返りに関わる可能性があります。
⑦ 神経の病気
末梢神経障害のほか、筋肉を動かす神経の病気(運動ニューロン疾患)や脊髄の神経の圧迫なども原因になることがあります。
なお、歩くとふくらはぎが痛み、休むと楽になるという症状は「跛行(はこう)」といい、脚の動脈硬化(末梢動脈疾患)による血流不足が原因のことがあります。これはこむら返りとは別のものです。この症状がある場合は医師にしっかり伝えましょう。
こんなときは医療機関へ——受診の目安
次のような状況では、内科を受診することをおすすめします。
- こむら返りで眠れない、睡眠が妨げられている
- 脚のしびれやむくみも伴っている
- けいれんが10分以上続く
特に次のような特徴がある場合は注意が必要です。腕や体幹(胴体)にけいれんが起こる場合や筋肉のひきつりがある場合は、単なる良性のこむら返りではない可能性が高まります。
- 腕や胴体の筋肉にもけいれんが起こる
- 筋肉がぴくぴくとひきつる
- 筋力が落ちてきた
- けいれんしていないときも感覚がない・痛みがある
- 脱水や利尿薬の使用後にけいれんが起こる
嘔吐・下痢・大量の汗で体液を大きく失った後や、強い症状が重なる場合はすぐに医療機関へ。
また、次のような症状が突然現れた場合は、ためらわず119番に連絡してください。
- 突然のしびれ
- 突然、片方の腕や足に力が入らなくなる
- 顔半分が動きにくい・しびれる
- ろれつがまわりにくい
- 意識がない、またはもうろうとしている
救急車を呼ぶか迷ったときは、救急相談窓口(♯7119)に電話して相談することもできます。
受診の際は「いつ・どのくらいの頻度で・どこがつるか」「きっかけや他の症状は何か」「飲んでいる薬・お酒の量」などを伝えると、診察がスムーズになります。
まとめ
- こむら返りは筋肉が突然ギュッと収縮するけいれんで、夜間や安静時に起こりやすい
- 脱水・電解質不足・筋肉の柔軟性低下・薬・病気などが背景になることがある
- つったらふくらはぎをゆっくり伸ばし、立って体重をかけるか、温めて対処する
- 予防には寝る前のふくらはぎストレッチと水分補給が効果的
- 繰り返す・他の症状を伴う場合は背景の原因を内科で調べてもらおう
- 腕や体幹のけいれん・突然の筋力低下・意識の変化は要注意サイン
