おしりのトラブル、「きっと痔だろう」で済ませていませんか?
朝晩が冷え込むようになると、暖かい部屋でじっと座って過ごす時間が自然と増えますよね。そんな季節、おしりからの出血や痛み、排便のときに何かが出てくる感じがあっても、「どうせ痔でしょ」と放置している方は意外と多いもの。でも実は、痔にも種類があって症状が違いますし、「痔だと思っていたら別の病気だった」というケースも決して珍しくありません。この記事では、いぼ痔・切れ痔の違いから、冷えや便秘との関係、そして出血があるときに大腸の病気を確かめることの大切さまで、わかりやすく解説します。
痔には3種類ある——まず基本を整理しよう
肛門にまつわる病気は、大きく3つに分けられます。
- 痔核(いぼ痔):もっとも多いタイプ
- 痔瘻(あな痔):肛門の周囲に管状のトンネルができる病気
- 裂肛(切れ痔):肛門の出口近くの皮膚が切れる状態
実は、いぼ痔のもとになる組織は正常な肛門の中にもともと存在しています。何らかの症状が出て初めて「病気の痔核」として扱われるので、症状がなければ通常は治療の対象にはなりません。
また、いぼ痔はさらに2種類に分けられます。
- 内痔核:肛門の内側1〜2cmほどのところにできる
- 外痔核:それより外側、肛門の出口付近にできる
切れ痔は20〜40歳代の女性に多くみられることが知られています。
いぼ痔と切れ痔——症状はこんなに違う
いぼ痔(内痔核)の症状
- 出血:鮮やかな赤い血が排便のときに出て、排便後は自然に止まるのが特徴
- 脱出(脱肛):強くいきんだときに痔核が肛門の外に出てくる。いわゆる「脱肛」はこの状態のことで、別の病気ではありません
- 痛み:内痔核ができる場所には痛みを感じる神経がないため、基本的に痛みはない
脱出の程度は4段階に分類されます。
- Ⅰ度:排便時に肛門の中でふくらむが出てこない
- Ⅱ度:排便時に出るが自然に戻る
- Ⅲ度:指で押し戻す必要がある
- Ⅳ度:完全には戻らない
程度によって治療法が変わるため、「指で押し戻している」「戻らなくなってきた」という方は要注意です。
また、急に強い痛みと腫れが出るタイプもあります。
- 血栓性外痔核:肛門の出口付近に血のかたまり(血栓)ができてぷっくり腫れる
- 嵌頓(かんとん)痔核:脱出した痔核が戻らなくなり、激しい痛みとともに大きく腫れた状態
切れ痔(裂肛)の症状
- 痛み:排便のときだけでなく、排便後しばらく続く強い痛みが特徴
- 出血:鮮やかな赤い血で、紙に少し付く程度のことが多いが、便器が赤くなることも
切れ痔をくり返すと肛門が少しずつ狭くなり、便が細くなることがあります。排便時の痛みが怖くて便意を我慢→便が硬くなる→傷がさらに悪化、という悪循環に陥りやすいのも特徴です。
冷え・便秘・長時間座り——痔を悪化させる日常の習慣
痔核が悪化する原因としてよく挙げられるのが、以下のような生活習慣です。
- 排便時の強いいきみ
- 重い荷物を持つ仕事や筋力トレーニングなど、腹圧がかかる行為
- 長時間のデスクワークや座り仕事
- 飲酒や辛い食べ物のとりすぎ
- おしりを冷やすこと
痔核は突然できるものではなく、もともとある組織が便秘やいきみによって少しずつ大きくなり、症状が出てくるものです。
切れ痔は、硬い便を無理に出すことで起こりやすくなります。毎日排便があっても、便が硬い・排便に時間がかかるという方にも多くみられます。また、切れた後に下痢が続くと治りにくくなります。
ちなみに便秘は「排便回数が少ない」だけではありません。毎日出ていても、出しにくい・残った感じがするという状態も便秘に含まれます。
毎日できる!排便習慣の整え方
痔の予防・悪化防止には、日々の排便習慣を整えることが基本です。次のポイントを意識してみましょう。
- 便意を感じたらすぐトイレへ、滞在は3分以内を目安に:長くいきみ続けるのはNGです。スマートフォンを持ち込む習慣がある方は特に注意を。
- 水分と食物繊維をしっかりとる:便を柔らかく保つために欠かせません。野菜・果物・海藻・きのこ類を意識的に取り入れましょう。
- 朝食を抜かない:朝食をとることで腸が動き出し、排便を促す反射が起きやすくなります。
- 食後にトイレに行く習慣をつける:特に朝食後は腸が活発になりやすいタイミングです。
- 長時間同じ姿勢で座り続けない:デスクワークの方は、1時間に一度は立ち上がるクセをつけましょう。
- おしりを冷やさない:冷えは血行を悪くして痔を悪化させます。座布団や腹巻きなどで冷え対策を。
- 入浴でおしりを温める:痛みや出血のある痔には、湯船にしっかり浸かって温めることが有効とされています。シャワーだけで済ませている方は入浴習慣を見直してみて。
市販の塗り薬や坐薬は痛みや出血を和らげる効果がありますが、痔核そのものを消したり、脱出を治したりする効果はないとされています。脱出をくり返す場合は、注射療法や手術が検討されることがあります。また、治療後も便秘・下痢をしない生活習慣を続けることが再発予防の鍵です。
「痔だと思っていたら大腸がんだった」を防ぐために
おしりからの出血は痔でよくみられる症状ですが、実は大腸がん(特に直腸がん)の出血ととてもよく似ています。痔があるからといって、出血を全て「痔のせい」と決めつけてしまうのは危険です。
大腸がんは早い段階ではほとんど自覚症状がありません。進行すると以下のような症状が現れることがあります。
- 便に血が混じる・便の表面に血が付く
- 貧血によるめまい・ふらつき
- 便秘や下痢が続く
- 便が細くなった
- 便が残る感じがする(残便感)
- おなかが張る
これらの症状は痔などの良性疾患でも起こりますが、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。
出血の原因はがんだけではない
出血と一口に言っても、原因はさまざまです。
- 潰瘍性大腸炎:大腸の粘膜に炎症が続く病気。血液に粘液が混じる・下痢を伴うケースで疑われます
- クローン病:炎症性腸疾患のひとつ。腹痛・下痢・血便・体重減少などがみられます
- 虚血性大腸炎:強い腹痛を伴う下痢の後に血便が出る
- 胃・十二指腸潰瘍:タールのように黒い便が出る(肛門から離れた上部の消化管からの出血)
出血の色・量・状態が普段と違うと感じたときは、一度きちんと検査を受けることをおすすめします。
大腸がん検診と大腸内視鏡検査——知っておきたいこと
大腸がん検診は、一般的に40歳から1年に1回の受診が推奨されています。検査は便潜血検査(2日法)といって、2日分の便を採取し、肉眼では見えないほど微量な血液が混じっていないかを調べます。
ここで注意したいのが、1日分だけ陽性でも精密検査が必要だということ。「もう1回便潜血検査を受ければいい」は誤りで、精密検査の代わりにはなりません。
もともと痔がある方でも、「痔からの出血か、がん・ポリープからの出血か」は精密検査をしないと判断できません。精密検査では、肛門から内視鏡を入れて直腸から盲腸まで大腸全体を観察する全大腸内視鏡検査が行われます。
便潜血検査で「要精密検査」と言われたら、面倒がらずに必ず精密検査を受けましょう。
こんな症状があったら早めに受診を
以下のような症状がある場合は、内科・消化器内科・肛門科などへの受診を検討してください。初期であれば手術をしない治療で改善できるケースも多くあります。
- おしりからの出血が続く・くり返す
- 便に粘液が混じる、下痢や腹痛を伴う
- 便が細くなった、残便感がある、便秘・下痢など便通が変わった
- 体重が減っている、めまいなど貧血の症状がある、血縁者に大腸がんの方がいる
- 健診の便潜血検査で「要精密検査」と言われた(1日分だけの陽性でも)
- 排便のときに出てくるものが自然に戻らず、指で押し戻している
- 排便後も痛みが長く続く
- おしりが急に腫れて強く痛む
- 痛みや腫れが日ごとに悪化している、発熱を伴っている
特に最後の「痛みや腫れが日ごとに悪化・発熱を伴う」ケースは、肛門の周囲に膿がたまる肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)の可能性があります。塗り薬や坐薬では効かず、膿を排出する処置が必要になるため、我慢せず早めに受診してください。
救急車を呼ぶべき症状
以下の場合はためらわず119番に連絡してください。
- 出血量が多い、またはタールのように真っ黒い便が出る
- 血を吐いた
- 突然の激しい腹痛、または激しい腹痛が続く
- 支えなしで立てないほど急にふらつく
- 顔色が明らかに悪い
いつもの痔の出血と「何か違う」と感じたときは、自己判断せず迷わず救急を利用してください。
まとめ
- 痔には「いぼ痔(痔核)」「切れ痔(裂肛)」「あな痔(痔瘻)」の3種類があり、症状が異なる
- いぼ痔は出血・脱出が主な症状で基本的に痛みはなく、切れ痔は排便時・排便後の強い痛みが特徴
- 冷え・長時間の座り仕事・便秘・いきみが痔を悪化させる主な要因
- 毎日の排便習慣(水分・食物繊維・短時間のトイレ・温浴)を整えることが予防・悪化防止の基本
- おしりからの出血は大腸がんや潰瘍性大腸炎など他の病気でも起こる。「痔だから大丈夫」と自己判断しないことが重要
- 40歳以上は年1回の大腸がん検診(便潜血検査)を。陽性なら必ず精密検査(大腸内視鏡)を受ける
- 出血が続く・便通が変わった・痛みや腫れが悪化するなど気になる症状があれば早めに医療機関へ
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