健診で「貧血なし」なのに、なぜかずっとだるい——もしかして「隠れ貧血」かも?
「疲れが取れない」「階段を上るだけで息が切れる」「頭がぼんやりして集中できない」——でも健診の結果は「貧血なし」。そんな経験、ありませんか?
実は、健診でチェックされる貧血の指標(ヘモグロビン)が正常でも、体の中の鉄の”貯金”が底をついている状態があります。これが「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」です。特に月経のある女性にとても多いのに、一般的な健診では見つかりにくいのが厄介なところ。今回はそのしくみと、見逃さないためのポイントをわかりやすく解説します。
ヘモグロビンとフェリチン——「財布」と「貯金通帳」のちがい
まずは基本のキから整理しましょう。
- ヘモグロビン:血液中で酸素を運ぶたんぱく質。健診で「貧血」と判定されるのはこの値が低いとき。いわば財布の中の現金。
- フェリチン:体内に鉄を蓄えておくたんぱく質。いわば銀行の貯金残高。
体は賢くできていて、鉄が不足し始めるとまず貯金(フェリチン)を切り崩して、財布(ヘモグロビン)の中身を維持しようとします。だから健診では「貧血なし」と出ていても、実は貯金はすでに底をつきかけている——これが隠れ貧血のカラクリです。
貯金が完全に尽きて初めてヘモグロビンが下がり、健診で「貧血」と指摘されます。つまりフェリチンの低下は、ヘモグロビン低下の”前段階”。そして症状は、この前段階からすでに出はじめることがあるのです。
こんな症状、心当たりありませんか?——隠れ貧血のサイン
以下のような症状は、隠れ貧血との関連が指摘されています。
- ✅ 疲れやすい、休んでも回復しない
- ✅ 階段や坂道で息が切れる・動悸がする
- ✅ 集中力が続かない、頭がぼんやりする
- ✅ 髪が抜けやすい、爪が割れやすい・スプーンのように反る
- ✅ 氷をガリガリ食べたくなる(「氷食症」——鉄欠乏に特徴的な症状です)
- ✅ 脚がむずむずして眠れない(むずむず脚症候群との関連も報告されています)
どれも「疲れのせいかな」「年齢のせいかな」「気のせいかも」と流されやすい症状ばかりです。でも、フェリチンを調べてみたら鉄欠乏が原因だった、というケースは珍しくありません。
なぜ鉄は減ってしまうの?——補う前に「原因」を知ろう
鉄が不足する理由はいくつかあります。
🩸 月経のある女性の場合
毎月の月経による出血が、鉄の収支を赤字にする最大の原因です。さらに妊娠・授乳期、偏った食事やダイエット、激しい運動習慣なども鉄の消耗を加速させます。
⚠️ 男性・閉経後の女性の場合は要注意
月経がない方が鉄欠乏になっている場合は注意が必要です。胃や腸からの目に見えない出血(胃潰瘍・ポリープ、場合によっては消化器系のがんなど)が隠れていることがあります。この場合は「鉄を補って終わり」ではなく、出血源の検索(便の潜血検査や内視鏡検査)が優先されます。
隠れ貧血はどうやって調べる?治療の流れ
🔬 検査について
一般的に、採血でフェリチン・血清鉄・ヘモグロビンなどをまとめて測定します。フェリチンの測定は健康保険の適用で調べられることが多く、通常の採血と同じ手順でOKです。
🥩 食事での対策
フェリチンが低めとわかったら、まず食事の見直しから。鉄を多く含む赤身肉・レバー・青魚・大豆製品を意識的に取り入れましょう。また、ビタミンCと一緒に摂ると鉄の吸収率がアップするのでおすすめです(例:レバニラ炒め+レモン果汁、ほうれん草のサラダ+オレンジ)。
💊 鉄剤での補充
食事だけでは補いきれない場合、医師の判断で鉄剤が処方されます。鉄剤は胃のむかつきが出ることがありますが、種類を変えたり、1日おき(隔日服用)にしたりといった工夫で続けやすくなります。
大切なのは、ヘモグロビンの数値が戻っても、フェリチン(貯金)が回復するまで補充を続けること。途中でやめると、数か月でまた元の状態に逆戻りしてしまいます。
なお、フェリチンは体に炎症があると値が上がる性質もあるため、数値の解釈は他の検査結果と合わせて行う必要があります。自己判断での鉄サプリの大量摂取は避け、気になる方は医療機関に相談しましょう。
まとめ
- 🔑 健診の貧血チェック(ヘモグロビン)が正常でも、鉄の貯金(フェリチン)が枯れている「隠れ貧血」がある
- 🔑 慢性的な疲労・息切れ・集中力低下・抜け毛などはフェリチン低下のサインかもしれない
- 🔑 月経のある女性は特になりやすいが、男性・閉経後女性の鉄欠乏は消化器疾患の検索が先決
- 🔑 食事改善+必要なら鉄剤で、ヘモグロビンだけでなくフェリチンが回復するまで継続することが重要
- 🔑 「健診は正常なのに、なんとなくずっとだるい」という方は、フェリチン測定を医師に相談してみて
「疲れは体質だから仕方ない」と諦める前に、一度調べてみる価値があるかもしれません。あなたの不調に、ちゃんと原因があるかもしれないから。
参考:日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」/WHO: Guideline on use of ferritin concentrations to assess iron status
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