9月にインフルエンザワクチンを打っても、冬に2回目は必要ない?

今年は異例の早さで8月にインフルエンザが流行入りし、「こんなに早く打ったら、冬にもう1回打たないといけないのでは?」という疑問を持つ方が増えています。結論から言うと、13歳以上の方は今年も1回で十分、2回目は不要です。なぜそう言えるのか、今季の流行の状況とワクチンの効き方の両面から整理します。

今季のインフルエンザはどんな状況?——異例の早期流行

厚生労働省の発表によると、全国の定点あたり報告数(医療機関ごとに集計した患者数の目安)は、2025年8月17日〜23日の週に流行入りの基準である1.00人を超え、翌週には1.76人に達しました。感染症法が制定された1999年以降、2009年に次いで2番目に早い流行入りという異例の状況です。

現在検出されているウイルスは、A(H1N1)pdm09型がほとんどを占めています。昨シーズンはA(H3N2)型が主体でしたので、主流の型が入れ替わっています。この点は、ワクチンの効果の持続時間を考えるうえで重要なポイントになります。

「2回打ち」は標準ではない——添付文書と海外ガイドラインの立場

インフルエンザワクチンの公式な用法(添付文書)では、次のように定められています。

  • 13歳以上:1回、または1〜4週間の間隔で2回
  • 13歳未満:2〜4週間の間隔で2回

つまり2回打つ場合でも、それは「秋に1〜4週間あけて2回」のこと。「秋に1回、冬にもう1回」という打ち方は、用法としてもともと想定されていません

海外の公的機関も同じ立場です。米国CDCの予防接種諮問委員会(ACIP)は「そのシーズンの接種を終えた人への追加接種は、いつ接種したかにかかわらず推奨しない」と明記しています。WHOも「流行期の前に年1回」という方針です。年2回の接種で発症や入院が減ることを示した臨床試験は、現時点では見当たりません。

さらに、同じ株のワクチンを短い間隔で重ねて接種すると、2回目のあとに抗体(ウイルスと戦うたんぱく質)の上がり方が鈍くなるという観察研究の報告もあります。「打てば打つほど守られる」という単純な話ではないのが、現在の科学的な理解です。

9月に打って、冬まで効果は持つの?

多くの方が本当に心配しているのは、この点ではないでしょうか。ワクチンの効果は接種から約2週間で立ち上がり、おおむね5か月程度持続するとされています。9月中旬に接種すれば、2月中旬ごろから効果が薄れ始める計算です。

ただし、効果の落ち方は流行しているウイルスの型によって変わります。

  • A(H3N2)型:時間とともに効果が下がりやすいことが知られています
  • A(H1N1)pdm09型(今季の主流):複数の研究で、シーズン前半と後半で効果に大きな差が出にくいことが示されています

また、18歳未満や高齢でない成人では、時間経過による効果の低下が検出されにくいとの報告もあります。今季のワクチンは供給自体が9月中旬から始まっており、これより早く打つことはそもそもできません。流行がワクチンの流通より先に来てしまった年だからこそ、入荷したら早めに打つのが合理的な判断です。

もちろん、シーズン途中でウイルスの型が変わる可能性はあります。それでもその対策は「2回目の接種」ではなく、周囲の流行に応じた早めの受診や家族の接種のほうが、根拠のある方法です。

2回接種が標準となる例外のケース

以下に当てはまる場合は、2回接種が推奨されます。

  • 13歳未満のお子さん:2〜4週間の間隔で2回が標準です
  • 免疫を強く抑える治療を受けている方など:医師が個別に判断する場合があります。主治医にご相談ください

受験生のいるご家庭へ——本人より「家族全員の接種」が効果的

1〜2月の受験期を守りたい場合、本人が2回打つよりも家族全員が1回ずつ接種するほうが根拠のある方法です。家庭内でウイルスを持ち込む人を減らす効果(間接防御)は、海外の集団を対象にした無作為化試験(最も信頼性の高い研究手法)で示されています。本人に余分な副反応リスクを負わせずに守れる、現実的な戦略です。

まとめ

  • 今季のインフルエンザは異例の早期流行。主流はA(H1N1)pdm09型
  • 13歳以上は1回接種が標準。「秋→冬」の2回打ちは用法上も根拠上も推奨されない
  • 9月接種でも効果はおおむね5か月持続し、今季の主流株では後半まで効果が落ちにくいとされる
  • ワクチンを重ねて打つと抗体の上がり方が鈍くなる可能性も
  • 受験生を守るには、本人の追加接種より家族全員の接種が有効
  • 13歳未満のお子さんや免疫抑制治療中の方は例外。かかりつけ医に相談を

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