35歳と40歳以上で健診の検査項目が増えるのはなぜ?
秋になると会社から定期健康診断の案内が届くシーズン。「今年は血液検査や心電図もあるって言われた」という方もいるのではないでしょうか。実は、35歳と40歳以上の方は、法令によって一部の検査を省略できない仕組みになっています。
労働安全衛生規則第44条では、事業者は年1回、定期的に医師による健康診断を行う義務があると定めています。検査項目は全部で11項目。このうちいくつかは、医師が必要でないと判断した場合に限り省略できますが、その省略が認められるのは「40歳未満の人(ただし35歳を除く)」とされています。
つまり、34歳以下と36〜39歳の人は医師の判断で省略できる可能性がありますが、35歳と40歳以上の人は省略の対象外。年齢節目の健診では、フルセットで受けることが前提になっています。
同様のルールは他の項目にも適用されます:
- 腹囲:40歳未満(35歳を除く)は省略可能
- 胸部エックス線検査:40歳未満(20・25・30・35歳を除く)は省略可能
- 聴力検査:35歳・40歳・45歳以上は簡易検査への代替が認められない
なお、省略はあくまで「医師が必要でないと認めた場合のみ」。一律に省けるわけではなく、過去の検査結果や症状なども考慮して個別に判断されます。
血液検査5項目+心電図で何がわかるのか
35歳・40歳以上の健診で追加される5つの検査と心電図。それぞれどんな目的があるのかを整理してみましょう。
🔴 貧血検査(血色素量・赤血球数)
血液中のヘモグロビン(酸素を運ぶたんぱく質)と赤血球の数を調べます。ヘモグロビンが低い場合は、鉄分不足による貧血(鉄欠乏性貧血)などが疑われます。動悸・息切れ・顔色不良・疲労感が出ることがありますが、症状がないまま進んでいるケースも少なくありません。
🟡 肝機能検査(AST・ALT・γ-GT)
肝臓のダメージを早期に発見するための検査です。ALTとγ-GTは、肝臓の障害だけでなく、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳血管疾患のリスク予測にも役立つとされています。γ-GTはお酒の飲みすぎや胆道(胆汁の通り道)の病気でも上がることがあります。
🟠 血中脂質検査(LDL・HDL・中性脂肪)
動脈硬化の原因となる脂質の異常を調べます。一般的な目安は以下のとおり:
- LDLコレステロール(いわゆる悪玉):140mg/dL以上で要注意
- HDLコレステロール(いわゆる善玉):40mg/dL未満で要注意
- 中性脂肪:150mg/dL以上(空腹時)で要注意
ただし、数値が基準を超えていても、すぐに治療が必要とは限りません。生活習慣の改善から始めることも多いです。
🔵 血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c)
糖尿病のリスクを調べます。HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、過去1〜2か月の平均的な血糖レベルを反映する指標で、食事のタイミングに左右されにくいのが特徴です。空腹時血糖と同等の検査として認められています。
🟢 心電図検査
安静時に12か所から心臓の電気信号を記録する検査です。不整脈・狭心症・心筋梗塞の兆候・高血圧による心臓への影響などを調べます。自覚症状がなくても異常が見つかることがあります。
2027年4月から健診内容が変わります
2025年4月に改正省令が公布され、2027年4月1日から定期健康診断の内容が一部変更されます。
- ✅ 血清クレアチニン検査が追加:腎臓の働きを調べる検査です。長時間労働との関連が指摘される慢性腎臓病を早期に発見することが目的です。省略できるのは「40歳未満」のみ(35歳は医師の判断で省略可)
- ❌ 喀痰(かくたん)検査が廃止:胸部エックス線検査と合わせて行われていた痰の検査がなくなります
- 📝 肝機能検査の名称変更:GOT→AST、GPT→ALT、γ-GTP→γ-GTと表記が変わります
腎臓の検査が加わることで、生活習慣病の全体像をより広くカバーする健診へと進化します。
健診結果を受け取ったら確認すべき3つのポイント
健診を受けた後、結果通知を引き出しにしまったままにしていませんか? 事業者は健診結果を受診者に通知する義務があり、異常が見つかった場合は適切な就業上の配慮も求められます。一方で、労働者自身も結果を活かして健康維持に努めることが法令上求められています。
結果を受け取ったらまずここをチェック:
- 「要再検査」「要精密検査」「要治療」などの判定がある項目
- 昨年より大きく変化した数値
- 医師からのコメント欄
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病は、初期にはほぼ症状がありません。「なんともないから大丈夫」と放置していると、気づいたときには動脈硬化が進んでいた、ということも。症状がなくても先延ばしにしないことが大切です。
再検査を指摘されたら? 医療機関を受診する目安
以下のような場合は、内科などの医療機関に相談することをおすすめします:
- 健診で「要再検査」「要精密検査」「要治療」の判定が出た
- 心電図で異常を指摘され、動悸や胸の違和感がある
- 貧血を指摘され、動悸・息切れ・疲れやすさが続いている
- 胸部エックス線で所見を指摘された
受診の際は、健診結果報告書を持参すると、医師がより的確に判断できます。
こんな症状が突然起きたらすぐに119番を
健診結果とは別に、以下のような症状が急に現れたときは迷わず119番通報してください:
- 胸や背中の激痛
- 胸の中央が締め付けられるような痛みが2〜3分以上続く
- 急な息切れ・呼吸困難
- 顔の片側がゆがむ、ろれつが回らない、片方の手足に力が入らない、激しい頭痛
- 意識がない・もうろうとしている
- 冷や汗を伴うような強い吐き気
判断に迷うときは、救急相談窓口(#7119)に電話して専門家に相談できます。
まとめ
- 35歳と40歳以上は、法令により血液検査(貧血・肝機能・脂質・血糖)と心電図の省略が認められない年齢節目
- それぞれの検査には、生活習慣病・貧血・心疾患などの早期発見という明確な目的がある
- 2027年4月からは腎機能を調べる血清クレアチニン検査が追加される
- 健診結果は「要再検査」「要治療」などの判定と数値の変化を必ず確認する
- 症状がなくても再検査の指示は放置せず、健診結果を持って医療機関へ
- 突然の胸痛・意識障害などは迷わず119番。迷ったら#7119へ
