秋冬になると「すね・背中・腰」がかゆくなるのはなぜ?
空気が乾きはじめる秋から冬にかけて、すねや背中、腰のあたりがカサカサして、夜になるとかゆくなる——そんな経験はありませんか?
皮膚の乾燥そのものを「皮脂欠乏症(乾皮症)」、かき壊すなどして湿疹になった状態を「皮脂欠乏性湿疹」と呼びます。日本皮膚科学会からも「皮脂欠乏症診療の手引き2021」が公表されており、秋冬の乾燥肌ケアは立派な医学的テーマです。
なぜこの季節にかゆくなるのか、入浴と保湿で気をつけたいこと、病院に相談すべきサインを、わかりやすく整理します。
「乾燥肌」と「皮脂欠乏性湿疹」はどう違う?
皮膚の表面は、皮脂の膜と「角層(かくそう)」——皮膚のいちばん外側のうすい層——によって水分が逃げにくい状態に保たれています。加齢などで皮脂や汗の分泌が減り、この角層が水分をキープする力が落ちると、皮膚は乾燥します。これが皮脂欠乏症です。
症状としては、皮膚の表面に細かいひび割れができたり、ふけのような細かい皮(鱗屑=りんせつ)が付いたりして、かゆみを伴うことがよくあります。
そして、かゆいところをかき続けると皮膚のバリア機能がさらに壊れ、赤みやブツブツを伴う皮脂欠乏性湿疹や、硬貨のような丸い形の貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)へと進むことがあります。
ポイントは、かき壊す前の「乾燥の段階」から対策を始めること。悪化する前に手を打つのが、乾燥肌ケアの鉄則です。
秋冬に「すね・背中・腰」がかゆくなりやすい理由
なぜこれらの部位に症状が出やすいのか、主な理由をまとめます。
- 季節の影響:秋から冬にかけて症状が出はじめ、真冬にピークを迎えます。寒く乾燥した外気に加え、暖房による室内の乾燥も大きく影響します。
- 出やすい部位:すね(膝から下)と背中に多く、腰まわりや太ももにもよくみられます。
- 年齢の影響:皮脂や汗の分泌は年齢とともに減るため、中高年の方に多く起こります。
- 洗いすぎ:頻繁に洗う、洗浄力の強い石けんを使う、ゴシゴシこするといった習慣も乾燥を進める原因になります。
乾燥した皮膚では、かゆみを伝える神経が皮膚の表面近くまで伸びてきて、衣類のこすれなどわずかな刺激でもかゆみを感じやすくなります。かくとさらにバリアが壊れる、という悪循環に入りやすいのが特徴です。なお、背中は自分では保湿剤を塗りにくく、ケアが行き届きにくい場所でもあります。
入浴で気をつけたい3つのこと
毎日の入浴習慣が、実は乾燥肌の悪化に直結していることがあります。次の3点を意識してみてください。
- 熱すぎるお湯と長風呂を避ける:熱いお湯は皮膚の乾燥を一気に進めます。消費者庁が冬の高齢者の入浴事故予防の目安として挙げているように、湯温は41度以下、入浴時間は10分までを意識しましょう。皮膚にとっても体にとっても、熱い長風呂は控えめにしたいところです。
- こすらない:ナイロンタオルやブラシでゴシゴシこする洗い方は避け、やさしく洗うことが基本です。
- 洗浄剤を使いすぎない:石けんやボディソープの使いすぎに注意し、洗浄力の強いものは避けて、刺激の少ないものを選びましょう。
保湿のコツ——回数・量・タイミング
皮脂欠乏症の対策の基本は保湿です。「なんとなく塗っている」から「正しく塗る」に変えるだけで、効果がぐっと変わります。
回数は「1日2回以上」が目安
日本皮膚科学会の情報によると、保湿剤は1日1回よりも2回、3回と塗ったほうが効果的とされています。入浴後と朝など、生活の中で塗るタイミングをあらかじめ決めておくと継続しやすくなります。
量は「しっかりめ」が正解
「薄く伸ばせばいい」と思いがちですが、保湿剤は量も重要です。すねの乾燥肌を対象にした国内の臨床研究では、ヘパリン類似物質のクリームを片方のすね全体に1回約1.5g、1日2回塗ったグループは、約0.5gのグループと比べて、1週間後に乾燥が改善した人の割合が明らかに多かった(43.3%対13.3%)と報告されています。薄く伸ばしすぎず、しっかりした量を使うことがポイントです。
タイミングは「入浴後なるべく早めに」
入浴後、皮膚が少し湿っているうちに塗るのが一般的に勧められています。ただし、入浴直後に塗れなかった日でも、あきらめずに塗ることのほうが大切です。塗るタイミングにこだわりすぎて「今日はもういいか」とならないようにしましょう。
また、冬は保湿軟膏が硬くなりやすいので、手のひらに取って少し温めてから塗ると伸ばしやすくなります。強くこすらず、やさしく繰り返し塗り込むのがコツです。
保湿剤を選ぶときの注意点
保湿剤にはワセリン、ヘパリン類似物質、尿素などを含むものがあり、ドラッグストアで購入できる市販品にも同じ成分のものがあります。ただし、成分によって注意が必要な場合があります。
- ヘパリン類似物質:血液を固まりにくくする作用があるため、血友病・血小板減少症・紫斑病など出血しやすい血液の病気がある方は使用を避ける必要があります。また、ただれや潰瘍のある部分には直接塗らないこととされています。
- 尿素:炎症やひび割れがある部分では、一時的にしみたりヒリヒリしたりすることがあります。傷やただれのある面には直接すり込まないようにしましょう。
持病がある方、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる方は、市販品を選ぶ際にも薬剤師や医師に一言相談してください。
湿疹になったとき・皮膚に何もないのにかゆいとき
赤みやブツブツが出て湿疹になると、保湿剤だけでは治まりにくくなります。そうした場合は、炎症を抑える塗り薬(ステロイド外用薬など)やかゆみ止めの飲み薬が使われることがあります。かき壊してジクジクしている、膿が出ているといった場合は、自己判断で市販薬を塗り続けずに医療機関を受診してください。
一方、皮膚を見ても何もできていないのにかゆい状態は「皮膚そう痒症(ひふそうようしょう)」と呼ばれます。乾燥以外にも、腎臓・肝臓・胆道の病気、糖尿病やホルモンの異常、血液や内臓のがん、服用中の薬が原因になることがあると日本皮膚科学会は説明しています。保湿をしてもかゆみが続くときは、乾燥だけが原因とは限らないことを頭に置いておきましょう。
こんなときは医療機関へ——受診の目安チェックリスト
- 保湿を続けてもかゆみが治まらない、夜眠れないほどかゆい
- 赤み・ブツブツ・ジクジクが出てきた、丸い形の湿疹が広がってきた
- かき壊したところが痛む、膿が出るなど化膿が疑われる
- 皮膚に目立った変化がないのに全身がかゆい
- かゆみとともに、体重減少・だるさ・皮膚や白目の黄ばみなど他の症状がある
- 腎臓・肝臓の病気、糖尿病、甲状腺の病気などで治療中である
- 新しい薬を飲みはじめてからかゆくなった(薬は自己判断で中止せず、処方した医師に相談を)
皮膚の症状が中心であれば皮膚科、持病がある方や全身の症状も気になる方は内科でも相談できます。
まとめ
- 秋冬の乾燥肌のかゆみは「皮脂欠乏症」が原因。かき壊すと湿疹に進むため、乾燥の段階から対策を。
- 入浴はぬるめ・短めで、こすらず、洗浄剤は使いすぎない。
- 保湿剤は1日2回以上、しっかりした量を、入浴後なるべく早めに。たとえ直後でなくても塗り続けることが大切。
- ヘパリン類似物質・尿素には使用上の注意あり。持病がある方は薬剤師や医師に確認を。
- 湿疹化・化膿・全身のかゆみ・他症状の合併があるときは早めに受診しよう。
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