就職・実習前に「結核の血液検査」を求められる理由とは?
病院や介護施設、学校に就職するとき、あるいは看護・介護の実習に出る前に、「結核の検査を受けてきてください」と言われた経験はありませんか? 指定される検査は、胸のレントゲン(胸部X線検査)のこともあれば、血液で調べる検査のこともあります。
血液で調べる検査は「インターフェロンγ遊離試験(IGRA)」と呼ばれ、T-SPOT(ティースポット)はその代表的な検査のひとつです。
この記事では、なぜ結核の検査が求められるのか、レントゲンと血液検査の違いは何か、そして陽性だったときにどう考えればよいかを、法律や厚生労働省の資料をもとにわかりやすく解説します。
法律で決まっている!病院・施設・学校で働く人の結核健診
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)第53条の2は、事業者や学校の責任者に対して、結核の定期健康診断を実施する義務を定めています。
対象となる人と時期は、政令(感染症法施行令)で次のように決まっています。
- 学校(幼稚園を除く)、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどの社会福祉施設で働く人:毎年度
- 大学・高等学校・専修学校などの学生・生徒:入学した年度
健康診断の方法は、喀痰(かくたん)検査・胸部X線検査・聴診などと定められており、毎年の結核健診の中心は胸のレントゲンです。
採用時の血液検査は「比べるための記録」として推奨されている
厚生労働省の研究班がまとめた「結核院内(施設内)感染対策の手引き」(平成26年版)では、新しく採用する職員に対して、採用時点での結核感染歴の有無を把握するためにIGRAの実施が推奨されていると記されています。
この「採用時点のデータ(ベースライン)」を記録しておくことが大切な理由は、もし職場内で結核の感染が疑われたときに、それが新しい感染かどうかを判断するための重要な比較材料になるからです。
高齢者施設など結核患者が出やすい施設では、採用時にIGRAを行うことが望ましいとされています。
日本の結核は減っているが、20代にも出ている現実
厚生労働省の「2025年 結核登録者情報調査年報集計結果」によると、2025年に新たに登録された結核患者は9,899人。人口10万人あたりの患者数(罹患率)は8.0となり、「結核低まん延国」の基準である10.0を下回り続けています。
ただし、年齢別の罹患率を見ると、20〜29歳と70歳以上で高いという特徴があります。医療・福祉の現場で働く若い世代も、決して他人事ではありません。看護師・保健師から登録された患者さんは77人にのぼっています。
「感染」と「発病」は違う——レントゲンと血液検査が調べるものの違い
結核を理解するうえで大切なのが、「感染」と「発病」の2段階があるということです。
- 感染:結核菌が体の中に入った状態(症状はない)
- 発病:体内で結核菌が増えて、肺などに病気を起こした状態
感染した人がその後に発病する割合は、BCGワクチンを受けていない場合で生涯を通じて約10%といわれています。BCGを受けた人ではこれより低くなります。つまり、感染しても多くの人は発病しないのです。
| 検査の種類 | 何を調べるか |
|---|---|
| 胸部X線検査(レントゲン) | 肺に結核の影があるか=発病しているかを見る |
| 血液検査(IGRA:T-SPOT / QFT) | 結核菌に感染したことがあるかを調べる |
IGRAにはQFT(クォンティフェロン)とT-SPOTの2種類があります。どちらも、日本で広く接種されているBCGワクチンの影響を受けないのが大きな特徴です。以前使われていたツベルクリン反応は、BCG接種の有無によって結果の解釈が難しくなることがあるため、現在はIGRAが推奨されています。
陽性が出ても「すぐ結核」ではない——結果の受け止め方
血液検査(IGRA)の結果は次のように解釈します。
- 陰性:今回の検査では、結核菌に感染した反応は見られなかったということです。ただし、感染と判定されなかった人でも、のちに発病することがあるため、日ごろの体調管理は引き続き大切です。
- 陽性:結核菌に感染したことがある可能性を示します。これだけでは発病しているかどうかはわかりません。胸部X線検査などで、発病していないかを確かめることになります。
手引きでは、採用時の検査が陽性で、2年以内に感染した可能性が高いと考えられる場合には、「潜在性結核感染症(LTBI:感染しているが発病していない状態)」として治療を行うとされています。
陽性と言われたら、結果票を持って内科や呼吸器内科に相談しましょう。職場や学校への提出方法もあわせて確認してみてください。
こんな症状があれば、検査の予定とは別に受診を
年1回の健康診断だけですべての結核が早期発見できるわけではありません。日ごろから体調の変化に気をつけ、次のような症状があれば早めに内科を受診することをおすすめします。
- 咳(せき)や痰(たん)が2週間以上続く
- 微熱・体重減少・だるさが続く
まとめ
- 病院・診療所・学校・介護や福祉の施設で働く人は、感染症法により毎年の結核健診が義務づけられています。方法の中心は胸部X線検査です。
- 採用時の血液検査(IGRA)は、働き始める前の感染の有無を記録しておくために推奨されています。
- 血液検査は「感染」を、レントゲンは「発病」を調べます。陽性でも、すぐに結核という意味ではありません。
- 咳や痰が2週間以上続くなど気になる症状があれば、定期健診とは別に受診しましょう。
