「貧血=鉄不足」だけじゃない——ビタミンB12・葉酸不足という盲点
「貧血ぎみ」と言われたとき、多くの人は「鉄分が足りないのかな」と考えます。でも実は、ビタミンB12や葉酸の不足でも貧血は起こります。しかもB12の場合、貧血よりも先に手足のしびれ・物忘れ・気分の落ち込みとして現れることがあり、「年のせい?」と見過ごされやすいのが厄介なところです。
胃薬を長期間飲んでいる方、高齢の方、菜食中心の方——実は意外と身近な栄養不足かもしれません。今回はB12・葉酸不足の「見えにくいサイン」をわかりやすく整理します。
B12と葉酸、体の中で何をしているの?
どちらも赤血球を作るときのDNA合成に欠かせないビタミンです。不足すると赤血球がうまく分裂できなくなり、数は少ないのに一つひとつが大きい赤血球ができてしまいます。これを巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)と呼びます。
健康診断の血液検査では、赤血球の大きさを示すMCV(平均赤血球容積)という数値が手がかりになります。MCV100以上は「赤血球が大きすぎる」サインで、逆に鉄不足の貧血ではMCVが小さくなるのと対照的です。
さらにB12は神経を保護する働きも担っています。そのため長期間不足すると、神経にまつわる症状があれこれ出てきます。
B12不足で起こりうること——意外と多い神経・精神症状
B12が足りなくなると、こんな症状があらわれることがあります。
- 手足の先の左右対称なしびれ・感覚の鈍さ・ふらつき——脊髄の神経(後索)が傷つくことで起こります
- 物忘れ・集中力の低下・うつ症状——高齢の方では認知症と見分けがつきにくいことがあります
- 舌がつるつるになって痛む(舌炎)、食欲低下
- 疲れやすさ・息切れ——これが貧血によるサインです
「しびれ+物忘れ+疲れやすい」が重なっているのに、血液検査をしていないまま……という方は一度チェックしてみる価値があります。
こんな人は不足しやすい——胃薬ユーザーは要注意
B12・葉酸不足は、特定の条件が重なると起こりやすくなります。当てはまるものはありませんか?
ビタミンB12が不足しやすい人
- 胃薬(PPI・H2ブロッカー)を長期服用している——B12の吸収には胃酸が必要なため、胃酸を抑える薬を数年単位で飲み続けると不足することがあります。PPIとはオメプラゾールやランソプラゾールなど、よく処方される胃酸を強力に抑える薬です
- 胃の手術後・萎縮性胃炎・ピロリ菌感染——吸収に必要な胃酸や「内因子(ないいんし)」というたんぱく質が減ってしまいます
- 高齢の方——加齢とともに胃酸が減少します
- 菜食・ヴィーガンの方——B12は主に肉・魚・乳製品など動物性食品に含まれ、植物性食品にはほとんど含まれません
- 糖尿病薬・メトホルミンの長期服用——腸でのB12吸収を阻害することがあります
葉酸が不足しやすい人
- 偏食・野菜や豆類が少ない食事
- アルコールをよく飲む——アルコールは葉酸の吸収を妨げます
- 妊娠中・妊娠を計画している——赤ちゃんの発育に多く使われるため、需要がぐっと増えます
どうやって調べるの?治療は?
一般的に、血液検査で血算(MCVなど)・ビタミンB12・葉酸を測ることで確認できます。
B12が不足していれば、内服薬または注射で補充します。手足のしびれなど神経症状は、早く補充を始めるほど回復しやすいとされているため、気づいたら早めに対処するのが大切です。葉酸不足も内服薬で改善できます。
ひとつ重要な注意点があります。B12が不足しているのに葉酸だけを補充すると、貧血は改善しても神経障害が進んでしまうことがあるのです。そのため、両方をきちんと確認してから補充するのが原則とされています。サプリで葉酸だけ大量に摂るのも、B12不足を隠してしまう可能性があるので要注意です。
こんなサインが続いたらチェックを
- 健診でMCVが100以上、または貧血を指摘された
- 手足のしびれ・ふらつき・物忘れが続いている(特に胃薬長期服用・高齢・菜食の方)
- 舌の痛みや赤み、食欲低下が続く
- 妊娠を計画している(葉酸は妊娠前からの摂取が推奨されています)
「疲れやすい」「なんとなくしびれる」「最近物忘れが増えた」——そんな症状を年齢やストレスのせいにする前に、栄養不足という選択肢も頭に入れておくと、対処の糸口が見つかるかもしれません。
まとめ
- ビタミンB12・葉酸が不足すると、赤血球が大きくなる巨赤芽球性貧血が起こる
- B12不足はしびれ・ふらつき・物忘れ・うつ症状など神経・精神症状が先に出ることがある
- 胃薬(PPI・H2ブロッカー)の長期服用・高齢・菜食・胃の手術後の方は特に不足しやすい
- 健診でMCVが大きめ(100以上)だったときはB12・葉酸の確認を
- B12不足があるのに葉酸だけ補充するのはNG。両方セットで確認・補充が基本
- 神経症状は早期対処ほど回復しやすいため、気になる症状は放置しないことが大切
