冬になると手が荒れるのはなぜ?そのしくみを知っておこう
空気が乾燥し、お湯を使う機会が増える冬は、手荒れやあかぎれ(皮膚のひび割れ)に悩む人が増える季節です。日本皮膚科学会の「手湿疹診療ガイドライン」によると、手のひらや指全体が乾いてひび割れるタイプの手湿疹(てしっしん)は、冬に悪化しやすいことが知られています。
手荒れが起こる根本的な原因は、皮膚の「バリア機能」の低下です。皮膚のいちばん外側にある角層(かくそう)という薄い層が、外からの刺激を防ぐ盾の役割を担っています。ところが、洗剤に含まれる界面活性剤(汚れを浮かせて落とす成分)がこのバリアのたんぱく質構造を変えてしまうため、ダメージが蓄積されていきます。
- バリアが弱った状態に薄い刺激がくり返し加わる → 軽い赤み・皮むけ・かゆみが出る
- 刺激が長く続く → 皮膚が厚くごわごわする(苔癬化=たいせんか)、ひび割れ(亀裂)が生じる
指先が乾いてざらざらし、指紋が見えにくくなるタイプは「進行性指掌角皮症(ししょうかくひしょう)」とも呼ばれ、水仕事が多い方や美容師などによく見られます。また、アトピー性皮膚炎のある方はもともとバリア機能が弱くなりやすいため、刺激による手湿疹を起こしやすい傾向があります。
手洗いとアルコール消毒——手荒れを防ぐポイント
感染対策として手洗いや手指消毒は欠かせません。ただし、手をきれいにすること自体が皮膚の乾燥につながることも事実です。米国疾病予防管理センター(CDC)は次のように説明しています。
- アルコール手指消毒薬は、石けんと流水の手洗いに比べて皮膚への刺激や乾燥が少ない
- 皮膚の乾燥を防ぐため、熱いお湯は避ける
- ローションやクリームは、手洗いで生じる乾燥を防いだり和らげたりできる
ただし、手が目に見えて汚れているとき・食事の前・トイレのあとは、アルコールではなく石けんと流水での手洗いが基本です。手荒れがあってもこの場面での石けん手洗いはきちんと続けて、そのあとの保湿でカバーしましょう。
なお、アルコールで肌に異常(赤み・かゆみ・刺激感など)が出る方は、無理に使い続けず医療機関に相談してみてください。
保湿の正しいやり方——「塗るタイミング」と「続けること」が鍵
日本皮膚科学会の「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」では、保湿剤やバリアクリーム(皮膚を覆って刺激から守るクリーム)を予防として塗ることに効果があると示されています。また、石けんなどによる慢性的な刺激性の皮膚炎では、保湿剤の使用が「予防」と「治療」の両面で強く推奨されています。
毎日の習慣として意識したいポイントはこの3つです。
- 手を洗ったら、水気を残さず完全に拭き取る(濡れたままにしない)
- 日ごろからハンドクリームでスキンケアをする
- 思い出したときだけでなく、規則的に続けて塗る
「なんとなく塗る」よりも「毎回の手洗いのあとに必ず塗る」など、習慣に組み込む工夫が効果的です。赤みやかゆみが強い場合は、保湿だけでは不十分なことがあります。その場合は医療機関でステロイド外用薬などの炎症を抑える薬を処方してもらうことを検討しましょう。
手袋の上手な使い方——「守る道具」を正しく使おう
水・洗剤・シャンプー・食品などに素手で触れる作業を「ウェットワーク」といいます。手湿疹診療ガイドラインでは、保護手袋なしでウェットワークを続けることが皮膚の刺激反応を引き起こす大きなリスクになると指摘されています。
手袋を使うときの注意点は以下のとおりです。
- 家事にはゴム製またはポリ塩化ビニル製の家事用手袋を使う
- 長時間つけたままにすると蒸れてかえって皮膚のバリアを傷めるため、使う時間はできるだけ短くする
- 長時間使う場合は、手袋の内側にコットン(木綿)の薄手袋を重ねる
- 内側のコットン手袋が湿ってきたらすぐに取り替える
また、ゴム手袋の素材がかえって手湿疹の原因になることもあります。厚生労働省のマニュアルでも「手袋の素材やパウダーの有無によっては手荒れを悪化させたり、アレルギーを起こしたりすることがある」と注意されています。手袋を使うと症状が悪化する場合は、素材を変えるか医療機関に相談しましょう。
「ただの手荒れ」と「かぶれ(接触皮膚炎)」の違いを知ろう
手のかぶれ(接触皮膚炎)は、外から触れた物質が原因で起こる皮膚の炎症です。大きく2種類に分けられます。
①刺激性接触皮膚炎
石けん・洗剤・消毒薬などの刺激物が繰り返し触れて起こるもの。アレルギー体質でない人にも起こり、手湿疹全体の約7割はこのタイプとされています。
②アレルギー性接触皮膚炎
特定の物質に対してアレルギーが成立してしまった人にだけ起こるもの。原因としてはニッケルなどの金属、ゴム製品の成分、洗剤・シャンプーの成分などがあります。刺激性のものと比べて赤み・小さな水ぶくれ・かゆみが強く、手首や腕にまで湿疹が広がることもあります。
アレルギー性かぶれの原因を調べる検査がパッチテストです。疑わしい物質を背中に48時間貼り付け、その後の皮膚の反応を確認します。かぶれの治療でいちばん大切なのは「原因となる物質を見つけて取り除くこと」とされています。
感染(とびひなど)が疑われるサインを見逃さない
ひっかき傷やひび割れた部分に細菌が侵入すると、感染症に発展することがあります。代表的なのがとびひ(伝染性膿痂疹=でんせんせいのうかしん)で、ブドウ球菌や溶連菌などの細菌が皮膚に感染して起こります。次のような変化が見られたら要注意です。
- かき壊した部位のまわりに小さな水ぶくれができ、赤みが広がる
- 水ぶくれやうみが破れてただれ、周囲に広がっていく
- 赤く腫れた部分に厚いかさぶたが形成される
- 発熱・リンパ節の腫れ・のどの痛みなど全身症状をともなう
高齢の方は皮膚が薄くなりバリア機能が低下しているため、細菌感染を起こしやすい傾向があります。また、片方の手だけに皮むけが続く場合は、手の水虫(手白癬=てはくせん)との見分けも必要です。
こんなときは医療機関へ——受診を考えるサイン
手湿疹は「毎年のこと」「市販クリームで何とかなる」と思いがちですが、原因を見極めないと長引きやすくなります。以下に当てはまる場合は、皮膚科などへの受診を検討しましょう。
- 保湿や手袋で気をつけているのに手荒れがひどい・なかなか改善しない
- 赤み・小さな水ぶくれ・強いかゆみがあり、手首や腕にまで広がっている
- 特定の物や手袋に触れたあとに悪化する
- 水ぶくれ・ただれ・厚いかさぶたが広がっている
- 発熱・リンパ節の腫れ・のどの痛みをともなう
- 片方の手だけに皮むけが続いている
厚生労働省のマニュアルでも、手荒れがひどい場合は専門家に相談するよう案内されています。原因と対策を正しく把握することで、つらい症状を減らせることがありますよ。
まとめ
- 手荒れ(手湿疹)は、皮膚のバリア機能が洗剤・水・乾燥などの刺激で低下することで起こる
- アルコール消毒は石けん手洗いよりも皮膚への刺激が少ない。熱いお湯は避けて
- 保湿は「洗うたびに規則的に塗る」習慣が大切。赤みやかゆみが強ければ薬も検討を
- ウェットワーク時はゴムやビニールの手袋を使い、長時間の使用は避ける。内側にコットン手袋を重ねるのがコツ
- かぶれには「刺激性」と「アレルギー性」の2種類があり、アレルギー性はパッチテストで原因を特定できる
- 感染のサイン(水ぶくれ・ただれ・全身症状)や片手だけの皮むけは早めに受診を
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