就職・実習前に「抗体検査を受けてきて」と言われたら——麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜを基礎からおさらい
来春から新しい職場や実習先が決まったのに、突然「麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜの抗体検査の結果を提出してください」と言われて戸惑った経験はありませんか? 医療・福祉・教育の現場では、こうした書類が入職・実習の条件になっていることが珍しくありません。
この記事では、日本環境感染学会の「医療関係者のためのワクチンガイドライン 第5版」と厚生労働省の情報をもとに、なぜ求められるのか・結果の読み方・「足りない」と言われたときの対応をわかりやすく解説します。
なぜ就職・実習の前にこの4つの感染症が問題になるの?
日本環境感染学会のガイドラインは、医療関係者がこの4つの病気を発症すると、本人が重症化するリスクがあるだけでなく、周囲の患者さんや同僚への感染源になりうると明記しています。
それぞれの感染経路は次のとおりです。
- 麻疹(はしか)・水痘(水ぼうそう):空気感染・飛沫感染・接触感染(感染力がとくに強い)
- 風疹・おたふくかぜ(流行性耳下腺炎):飛沫感染・接触感染
厚生労働省によれば、麻疹は感染力が非常に強く、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症するとされています。しかも4つすべてに共通するのが、症状が出る前から人にうつす力があるという点。自覚のないまま広げてしまう怖さがあります。
ガイドラインでは、医師・看護師などの医療職だけでなく、事務職・学生・ボランティア・救急隊員・保険薬局のスタッフも含め、医療現場に関わるすべての人を接種対象としています。
また、以下の点も覚えておくと大切です。
- 風疹:免疫が不十分な女性が妊娠20週頃までに感染すると、赤ちゃんに先天性心疾患・難聴・白内障などを引き起こす「先天性風しん症候群(CRS)」の原因になる可能性があります(厚生労働省)。
- おたふくかぜ:2025年現在、子どもの定期接種に含まれておらず、後遺症としての「ムンプス難聴」が問題になっています(同ガイドライン)。
まず確認すべきは「予防接種の記録」——母子手帳を探そう
ガイドラインの考え方では、抗体検査よりも先に「予防接種の記録」を確認することが基本とされています。記録とは、母子健康手帳の予防接種欄や、予防接種済証のことです。
| 記録の状況 | 対応 |
|---|---|
| 1歳以上で2回の記録がある | 記録を提出。抗体検査は必須ではない |
| 1歳以上で1回だけの記録がある | 1回目から4週間以上あけて2回目を接種し、2回分の記録を提出 |
| かかったことはあるが記録がない | 抗体陽性の検査結果を提出(記憶違いの可能性があるため) |
| いずれにも当てはまらない | 4週間以上あけて2回接種し、記録を提出 |
なお、1歳以上での4回以上の接種は推奨されていません。記録は本人と勤務先の両方で保管しておくことが求められています。提出先から独自の書式や基準を指定されている場合は、まずそちらを確認してから準備を始めましょう。
抗体検査の結果、どう読めばいい?——数値と検査法の見方
記録がない場合などに抗体検査を行ったとき、結果はガイドラインの表をもとに次の3段階で評価されます。
- A(低値):あと2回のワクチン接種が必要
- B(中間値):あと1回のワクチン接種が必要
- C(十分):今すぐの接種は不要
ポイントは、同じ抗体でも検査法によって数値の意味が変わること。結果用紙では、数値だけでなく検査法の名前も一緒に確認してください。代表的な基準値は以下のとおりです。
- 麻疹(EIA法・IgG):2.0未満→A、2.0以上16.0未満→B、16.0以上→C
- 風疹(HI法):1:8未満→A、1:8〜1:16→B、1:32以上→C
- 水痘(EIA法・IgG):2.0未満→A、2.0以上4.0未満→B、4.0以上→C
- おたふくかぜ:ガイドラインにはEIA法・FIA法の基準のみ掲載。中和法(NT法)の基準は記載なし。結果の扱いは提出先や医師に要確認
また、「C」になるまで際限なく接種し続ける必要はないとガイドラインは述べています。
「抗体が足りない」と言われたら——ワクチンの受け方と注意点
記録がなく抗体値がAまたはBだった場合は、ガイドラインに沿ってワクチンを接種します。Aなら1か月以上あけて2回、Bならあと1回です。
これら4つのワクチンはすべて生ワクチン(弱めたウイルスを使うタイプ)です。以下に該当する方は接種できません。
- 明らかな発熱がある方(通常37.5℃以上)
- 重い急性の病気にかかっている方
- ワクチン成分でアナフィラキシー(強いアレルギー反応)を起こしたことがある方
- 免疫の働きに明らかな異常がある方、または免疫を抑える治療を受けている方
- 妊娠中の方
アナフィラキシーの場合を除き、その状態が落ち着いてから接種を検討します。女性は妊娠していないことを確認し、接種前約1か月・接種後2か月間は避妊が必要とされています。
スケジュールについても押さえておきましょう。
- 医師が必要と認めた場合は、複数のワクチンを同日・別部位に接種できる
- 別の日に1つずつ接種する場合は、中27日以上あける必要がある
- 麻疹と風疹には混合ワクチン(MRワクチン)と単独ワクチンがある。水痘とおたふくかぜは単独ワクチンのみ(2025年現在)
体質や治療上どうしても接種できない場合は、まず医師に相談し、提出先にもその旨を伝えることが大切です。ガイドラインでは、本人のプライバシーと感染予防の両方に配慮した勤務・実習体制を整えることが求められています。
受診・準備のタイミング——早めに動くのがコツ
就職・実習の時期が決まったら、次のステップで準備を進めましょう。
- まず母子健康手帳などで接種記録を確認する——記録が2回分あれば、それを提出するだけでOKなケースも多い
- 記録が見当たらない・感染歴が不明な場合は抗体検査を受ける
- 2回接種が必要になると、最低でも4週間以上の期間が必要——提出期限から逆算して余裕を持って動き始める
- 妊娠中・免疫抑制治療中の方は、接種前に主治医に相談する
また、麻疹の患者と接触した場合は、接触後72時間以内に緊急ワクチン接種を行うと発症を防げる可能性があるとガイドラインは述べています。心当たりがあればすぐに医療機関へ。
発熱や発疹など麻疹が疑われる症状が出たときは、受診前に電話で医療機関に麻疹の疑いがあることを伝え、マスクを着用したうえで公共交通機関をできるだけ避けて向かうよう、厚生労働省は呼びかけています。
まとめ
- 医療・福祉・教育の現場では、麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜの免疫証明が入職・実習の条件になることが多い
- まずは母子健康手帳で接種記録を確認。1歳以上で2回の記録があれば、抗体検査なしで提出できるケースがある
- 記録がない・感染歴が不明な場合は抗体検査を受け、検査法ごとの基準値でA・B・Cを判定する
- 抗体が足りない場合はワクチン接種が必要。2回接種には4週間以上かかるため、期限から逆算して早めに動こう
- 妊娠中・免疫抑制中の方は接種できない。必ず主治医に相談を
- おたふくかぜの中和法(NT法)の基準はガイドラインに未掲載のため、提出先や医師に確認が必要
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