毎朝スッキリ起きられないのはなぜ?日本の睡眠事情と「食いしばり」という盲点
「寝ても疲れが取れない」「なんだかいつも体がだるい」と感じている方、もしかしたらそれは、あなたの睡眠の質に問題があるのかもしれません。
実は、日本人の睡眠時間はOECD加盟国の中でも短い水準にあると言われています。平均睡眠時間は約7時間22分。さらに、厚生労働省の調査では、約3割の成人が「睡眠による休養が十分に取れていない」と感じていることが示されています。
ただ時間が短いだけでなく、「質の良い睡眠が取れていない」というのが、今の日本の睡眠事情の大きな課題なんです。睡眠の質の低下は、集中力や判断力、作業効率の低下に繋がることが多くの研究で報告されています。海外では、睡眠不足が国家規模で年間数兆円もの経済損失に上るという試算もあるほど、睡眠は個人の健康問題にとどまらず、社会全体に関わる大きなテーマになっているんですね。
あなたも無意識にやってるかも?「食いしばり」ってなに?
そんな睡眠の質を低下させる意外な原因として、最近注目されているのが「食いしばり」です。
「食いしばり」や「歯ぎしり」と聞くと、なんだか特殊なことのように感じるかもしれませんが、実は成人の8〜15%前後、睡眠時の歯ぎしりに限っても約16%前後もの人が経験しているという研究もあります。つまり、かなりの人が無意識のうちに歯を強く噛みしめたり、こすり合わせたりしている可能性があるんです。
この「食いしばり」が長期間にわたって続くと、顎の骨に強い力が加わり、骨が盛り上がってしまう「骨隆起(こつりゅうき)」という症状が見られることがあります。特に下顎の内側によく見られるのですが、これは、顎にどれくらいの力がかかってきたか、その「力の履歴」を示すサインの一つと考えられています。

食いしばりが引き起こす、あなたの体のSOS
夜間の強い噛みしめは、ただ歯や顎に負担をかけるだけではありません。実は、私たちの体全体に様々な不調を引き起こす可能性があるんです。
食いしばりの際に使われる「咬筋(こうきん)」「側頭筋(そくとうきん)」「内側翼突筋(ないそくよくとつきん)」といった咀嚼(そしゃく)筋が、寝ている間にずっと緊張し続けることになります。この筋肉の緊張は、さらに首の後ろの筋肉にも影響を及ぼすことがあるため、次のような症状として自覚されることがあります。
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起床時の首の後ろの張り
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こめかみの重さ
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朝から抜けない疲労感
「朝起きたら首が凝っている」「なんだか頭が重い」「たっぷり寝たはずなのに、全然疲れが取れない」…もしあなたがこんな悩みを抱えているなら、もしかしたら夜間の食いしばりが原因かもしれませんね。
こんなケースも!食いしばりで改善した事例
実際に、食いしばりが原因で不調を感じていた人の例をご紹介します。
40代の男性管理職の方が、「特に悪いところはないと思うが、歯の状態をチェックしてほしい」とあるクリニックを訪れました。口腔内を確認すると、下顎の内側に明らかな骨隆起が認められ、奥歯の咬耗(すり減り)も進行していました。問診で睡眠について尋ねると、「7時間以上は寝るようにしているが、疲れが取れにくい。朝起きた時は、いつも首の後ろが凝っている。」とのことでした。
この方には、咬合バランスの評価を行い、夜間用のマウスピースを作製し、さらに咬筋へのボトックス治療が行われました。併せて、日中の食いしばり癖についても説明を受けました。
数週間後、この男性は「朝の首の張りが軽減し、眠りの質が良くなった」と自覚するようになりました。
※個人の体験であり、同様の結果を保証するものではありません。効果には個人差があります。
食いしばりが仕事のパフォーマンスにも影響?
睡眠の質は、個人の健康だけでなく、仕事のパフォーマンスにも大きく関わっています。
慢性的な睡眠の質の低下は、判断力の低下、業務効率の低下、さらにはヒューマンエラーの増加といった問題に繋がる可能性があります。これまでは、睡眠改善というと、生活習慣の見直しやストレス管理が中心でしたよね。でも、今回ご紹介した「身体の慢性的な筋緊張」、特に夜間の食いしばりという視点は、まだあまり知られていないかもしれません。
もしかしたら、この「夜間の食いしばり」という見過ごされがちな問題が、働き盛りの皆さんのパフォーマンスに影響を与えている可能性もきっとあるでしょう。
歯科からのアプローチで睡眠の質改善へ
では、もし食いしばりが疑われる場合、どうすれば良いのでしょうか?
例えば、短期集中治療を行う神谷町デンタルクリニックのような歯科医院では、咬合設計を重視した診療を行っています。夜間の食いしばりが疑われる場合には、単に歯を見るだけでなく、咬合バランス、歯列状態、そして筋肉の緊張状態を総合的に評価し、包括的に検討しています。
もちろん、歯科クリニックが睡眠そのものを治療するわけではありません。しかし、口腔内の状態から体の緊張状態を把握し、適切なケアや、必要であれば他の医療機関との連携につなげる取り組みを行っています。
あなたの睡眠、見直してみませんか?
「睡眠」と聞くと、つい「何時間寝たか」という「時間」ばかりに意識が向きがちですが、実は「身体の緊張」という視点から捉え直すこともとても大切です。
その中に、多くの人が気づいていない「噛みしめ(食いしばり)」という盲点があるのかもしれません。もしあなたが、朝の体の不調や疲れが取れないことに悩んでいるなら、一度、歯や顎の状態を専門家である歯科医に相談してみてはいかがでしょうか。あなたの睡眠の質を向上させ、毎日をより快適に過ごすためのヒントが見つかるかもしれませんよ。
