夢のワクチン「ユニバーサルインフルエンザワクチン」って?

まず、ユニバーサルインフルエンザワクチンとは何か、簡単に説明させてくださいね。

今までのインフルエンザワクチンは、毎年流行が予想されるインフルエンザウイルスの種類に合わせて作られていました。だから、毎年「今年のワクチン」を接種する必要があったんです。でも、もし予想が外れてしまうと、ワクチンの効き目が弱くなったり、突然新しい型のインフルエンザ(新型インフルエンザ)が流行した時には、準備が間に合わないという課題がありました。

そこで研究者たちが目指しているのが、どんなインフルエンザウイルスが来ても対応できる、まるで「万能薬」のようなワクチンです。これが「ユニバーサルインフルエンザワクチン」。これがあれば、毎年ワクチンを打つ手間が省けるだけでなく、世界中で大流行する可能性のある新型インフルエンザにも、もっと早く、もっと確実に対応できるようになるかもしれません。病気で不安な日々を送る方々にとって、これほど心強い話はありませんよね。

住友ファーマとNIBNの挑戦

この画期的なワクチンの開発に取り組んでいるのは、住友ファーマ株式会社と国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)の共同チームです。彼らは、住友ファーマが独自に開発した「DSP-0546」という新しいワクチンアジュバント(ワクチンの効果をグッと高めてくれる物質)を使って、幅広いインフルエンザウイルスに効くワクチンの実現を目指しています。

この共同研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」という国のプロジェクトにも採択されている、まさに国を挙げた重要な取り組みなんです。CiCLE事業の詳細はこちらをご覧ください。

https://www.amed.go.jp/program/list/index07.html

欧州でのフェーズ1試験で嬉しいお知らせ!

彼らが開発しているユニバーサルインフルエンザワクチンの候補製剤「fH1/DSP-0546LP」(本剤)は、現在、ヨーロッパで臨床試験(フェーズ1試験)の真っ最中です。この試験は、18歳から40歳の健康な大人144人を対象に、本剤の安全性や体に与える影響(免疫原性)などを確認するために行われています。

そして今回、その中間解析の結果が発表されました。特に注目されたのは、「交差反応性」という項目です。これは、ワクチンがどれだけ幅広い種類のインフルエンザウイルスに対応できるか、という非常に大切な指標になります。

「交差反応性」って、どういうこと?

「交差反応性」という言葉、少し難しく感じるかもしれませんね。簡単に言うと、まるで「いろんな鍵穴に合うマスターキー」のようなものです。

インフルエンザウイルスには、H1N1型やH5N1型など、たくさんの種類があります。従来のワクチンが特定の鍵穴にしか合わない「専用の鍵」だとすると、ユニバーサルワクチンは、できるだけ多くの鍵穴に合う「マスターキー」を目指しているわけです。今回の試験では、このワクチンがどれだけ多くの「鍵穴」に反応できるかを調べた、ということになります。

H1N1型もH5N1型も!幅広いインフルエンザウイルスへの期待

今回の試験では、本剤を投与したグループで、インフルエンザウイルスH1N1型(毎年流行する季節性インフルエンザの代表的なタイプ)と、高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型(鳥の間で流行し、もし人に感染すると重篤な症状を引き起こす恐れがあるタイプ)の両方に結合する「抗LAH抗体」というものが、接種前と比べて大幅に増えていることが確認されました。

これは、どういうことかというと、このワクチン候補製剤が、毎年私たちを悩ませるH1N1型のインフルエンザだけでなく、もし流行したら大変なことになるH5N1型のような危険なウイルスにも、しっかり対抗できる抗体を作り出す可能性がある、ということを示しているんです!

まさに「マスターキー」としての可能性が、この中間解析で示された、というわけですね。病気で困っている方々、特に免疫力が低下している方々にとって、これは本当に心強いニュースではないでしょうか。

本剤が持つ大きな可能性

今回の結果を受けて、このユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤には、さらに大きな期待が寄せられています。

  • 毎年ワクチンを打つ必要がなくなるかも?
    もしこのワクチンが実用化されれば、毎年インフルエンザの流行株に合わせてワクチンを選び、接種する必要がなくなるかもしれません。これは、私たちにとって大きな負担軽減になりますし、ワクチン接種の機会を逃してしまうリスクも減らせますね。

  • 新型インフルエンザのパンデミックにも対応
    いつ発生するか分からない新型インフルエンザのパンデミック。もしそれが起こっても、このワクチンがあれば、幅広いウイルスに対応できるため、迅速な対応が可能になります。世界中の人々をインフルエンザの脅威から守る、まさに画期的な次世代ワクチンとして期待されています。

今後の展望

今回のフェーズ1試験は、まだ投与1年後のフォローアップ観察まで継続され、抗体依存性細胞障害活性など、さらに詳しい評価が進められています。研究チームは、複数のインフルエンザウイルス亜型に対応できる「マルチサブタイプインフルエンザワクチン」として、できるだけ早く実用化されるよう、引き続き研究開発を進めていくとのことです。

病気で困っている方々が、インフルエンザの心配なく安心して過ごせる日が来ることを、私たちも心から願っています。今後の研究の進展に、ぜひ注目していきましょう!

ちょっと専門的な話(もっと詳しく知りたい方へ)

プレスリリースには、少し専門的な言葉も出てきましたね。ここで、それらの言葉をもう少しだけ、分かりやすく説明させていただきます。

TLR7アジュバント (DSP-0546LP)って何?

これは、ワクチンの効果を強力にサポートしてくれる「免疫のブースター」のようなものです。私たちの体には、ウイルスが侵入してきたときに「これは敵だ!」と察知して、免疫システムを活性化させる「Toll様受容体(TLR)」というセンサーがあります。DSP-0546LPは、その中でも特に「TLR7」というセンサーを刺激することで、免疫細胞がウイルスと戦う力を高めてくれるんです。

LAH(Long Alpha Helix)って何?

インフルエンザウイルスは、形をコロコロ変える「変身名人」ですが、実はどのタイプのウイルスにも共通する「隠れた弱点」のような部分があります。それが「LAH」と呼ばれる領域です。このユニバーサルワクチンは、このLAHをターゲットにして、ウイルスが変身しても効力を失わないように工夫されています。今回のワクチンは、通常のウイルス表面にある抗原(ヘマグルチニン)を少し加工して、このLAHの部分を露出させ、免疫システムに見つけやすくしているんですよ。

標準物質に関する参考文献はこちらです。

https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1011554

H1N1亜型って何?

H1N1亜型は、A型インフルエンザウイルスの一種で、私たちが毎年冬に経験する季節性インフルエンザの代表的なタイプです。2009年には、このH1N1型が原因で世界的な大流行(パンデミック)が起こり、多くの人がインフルエンザに苦しみました。それ以来、私たちの生活にとって、とても身近な存在となっています。

H5N1亜型って何?

H5N1亜型もA型インフルエンザウイルスの一種ですが、こちらは主に野鳥や家禽(ニワトリなど)に感染するタイプです。しかし、もしヒトに感染してしまうと、非常に重い肺炎などの症状を引き起こし、残念ながら命を落とす危険性も高い、「高病原性鳥インフルエンザ」として知られています。このウイルスへの対策は、公衆衛生上も非常に重要視されています。

今回の研究で、このH1N1型とH5N1型の両方に効果を示す可能性が示されたことは、病気で苦しむ人々にとって、そして社会全体にとって、本当に大きな希望となるでしょう。研究のさらなる進展を、心から応援していきましょう!