歯周病治療と骨再生を同時に目指す新しい治療薬の可能性
福岡県福岡市に拠点を置く株式会社SENTAN Pharmaが、独自技術で開発を進めている「エリスロマイシン徐放性製剤」というお薬に、歯周病の治療と、なんと骨の再生を同時に叶えられる可能性が示唆されたというのです。
エリスロマイシンってどんなお薬?
エリスロマイシンは、「マクロライド系抗菌薬」と呼ばれる種類のお薬の一つです。このお薬は、細菌をやっつける「抗菌作用」はもちろんのこと、体の免疫のバランスを整えたり、炎症を抑えたりする作用も持っていることが知られています。そのため、肺炎や歯周炎といった、体の粘膜部分で起こる病気の治療によく使われているんですよ。
「徐放性製剤」って何がいいの?
今回開発されたのは、ただのエリスロマイシンではありません。「徐放性製剤」という特殊なタイプのお薬なんです。これは、体の中で薬の成分が少しずつ、ゆっくりと放出されるように作られた製剤のこと。一度飲んだら長時間効果が続くので、お薬を飲む回数を減らすことができます。これは、患者さんにとって、お薬を飲み忘れる心配が減ったり、日常生活の負担が軽くなったりと、生活の質(QOL)を大きく向上させることにつながる、とても嬉しい特徴なんです。
SENTAN Pharmaは、独自の「マイクロ粒子化技術」という、とても細かい粒子にする技術を使って、このエリスロマイシンの徐放性製剤の開発に成功しました。これにより、必要な場所で必要な期間、お薬が効果を発揮できるようになるわけですね。
歯周病と骨再生のカギ「DEL-1」
今回の発見の背景には、新潟大学を中心とした研究チームによる大切な研究があります。彼らは、「DEL-1」というタンパク質が、骨が溶けたり壊れたりする過程で、とても重要な役割を果たしていることを突き止めました。
歯周病などで炎症が起きると、このDEL-1が減ってしまい、骨が溶け始めることが分かっています。しかし、マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシンもこの仲間です!)を使うと、減ってしまったDEL-1を再び増やし、骨が溶けるのを食い止める効果があることが明らかになったのです。さらに、DEL-1は骨が新しく作られる「骨再生」にも重要な役割を担っていることが知られています。
残念ながら、DEL-1は年齢を重ねるとともに量が減ってしまうことが分かっています。これが、中高年以降になると歯ぐきの炎症が起きやすくなったり、骨が溶けやすくなったりする一因だと考えられています。
新しい製剤がもたらす希望
マクロライド系抗菌薬にはいくつか種類がありますが、エリスロマイシンは長年にわたって使われており、その安全性が確立されているお薬です。この安全なエリスロマイシンをマイクロ徐放性製剤にすることで、次のような素晴らしいメリットが期待されています。
- 患部に直接作用!
歯周病の患部に直接お薬を届けることで、DEL-1を再び増やして骨が溶けるのを抑えるだけでなく、細菌への抗菌効果も期待できます。これにより、全身に抗菌薬を使う必要がなくなります。 - 薬剤耐性の問題解決に貢献!
全身に抗菌薬を使わないということは、近年問題となっている「抗菌薬が効きにくくなる(薬剤耐性)」という課題の解決にも貢献できると考えられています。これは、私たちみんなの健康にとって、とても大切なことですね。 - より安全で効率的な治療!
実は、骨や歯を支える組織を再生させるのに必要なエリスロマイシンの量は、通常の抗菌効果を期待する量よりもずっと少量で済むことが分かっています。少ない量で効果が得られるということは、さらに安全で効率的な治療が期待できる、ということなんです。
共同研究で示された画期的な成果
SENTAN Pharmaは、新潟大学の前川准教授との共同研究で、このエリスロマイシン徐放性製剤の開発を進めてきました。そして、その効果を裏付けるいくつかの重要な研究結果が発表されています。
1. 長期間にわたる薬の放出(徐放性評価)

開発された徐放製剤は、なんと1週間にわたってエリスロマイシンをゆっくりと放出し続けることが確認されました。お薬を投与した直後に一気に放出されてしまう「初期バースト」と呼ばれる現象も約10%に抑えられ、1週間にわたって安定して薬が放出される、とても良好な結果が示されています。これは、治療効果を長く持続させ、投与回数を減らす上で非常に重要なポイントですね。
2. 骨が溶けるのをしっかり抑制(骨吸収抑制作用)

マウスを使った実験では、徐放製剤を投与してから21日後に骨のレベルを測定したところ、歯周病によって骨が溶けてしまうのを顕著に抑える効果が認められました。グラフを見ると、歯周炎がある状態では骨レベルが大きく低下していますが、エリスロマイシン徐放製剤(製剤5)を投与したグループでは、その低下が大きく改善されているのが分かります。これは、歯周病の進行を食い止める上で、とても期待できる結果と言えるでしょう。
3. DEL-1をしっかり誘導(DEL-1誘導能評価)

DEL-1が骨吸収抑制と骨再生に重要であることは前述しましたが、この製剤がDEL-1をしっかり増やせるかどうかも検証されました。徐放製剤を投与してから9日目のマウスの組織を調べたところ、DEL-1の発現量が非常に高くなっていることが確認されました。これは、この製剤がDEL-1を強く誘導する能力を持っていることを示しており、骨再生への期待が高まりますね。
4. 骨を壊す細胞を抑える(破骨細胞抑制効果)

骨には、骨を作る「骨芽細胞」と、骨を壊す「破骨細胞」という2種類の細胞があります。歯周病では、この破骨細胞が活発になりすぎて、骨がどんどん溶けてしまいます。実験では、マウスの歯槽骨(歯を支える骨)の中の破骨細胞が、エリスロマイシンの効果でしっかりと抑えられていることが確認されました。グラフのTRAP陽性領域(破骨細胞の活動を示す指標)が、歯周炎があるグループに比べて、エリスロマイシン徐放製剤(製剤5)を投与したグループで顕著に低いことが分かります。これは、骨が溶けるのを根本から食い止める可能性を示しています。
5. 骨を作る細胞を増やす(骨形成作用)

さらに嬉しいことに、骨を作る能力を持つ細胞(骨形成能を有する細胞)が、この製剤によって顕著に増加することが認められました。グラフのアルカリフォスファターゼ陽性細胞(骨を作る細胞の活動を示す指標)の割合が、製剤を投与したグループで高くなっていることが分かります。これは、骨が溶けるのを抑えるだけでなく、新しい骨を作り出す力を高める、という二重の効果が期待できることを示唆しています。
SENTAN Pharmaってどんな会社?
株式会社SENTAN Pharmaは、今回のエリスロマイシン徐放性製剤の開発を可能にした、独自の「SENTANプラットフォーム」というナノ・マイクロ粒子化技術を基盤としています。この技術を活かして、医薬品だけでなく、健康食品の「玄米フーディクル」や畜水産飼料の「ハイガンマオリザミール」など、幅広い分野で事業を展開している会社です。微粒子化という技術で、私たちの社会や環境をより良くすることを目指しているんですよ。
- 株式会社SENTAN Pharma公式サイト: https://www.sentan.co.jp/
まとめ
歯周病は、ただ歯ぐきが腫れるだけでなく、歯を失い、さらに骨まで溶かしてしまう、本当に深刻な病気です。しかし、SENTAN Pharmaが開発を進めるエリスロマイシン徐放性製剤は、歯周病の治療と同時に、失われた骨の再生も促すという、これまでの治療の常識を覆す可能性を秘めています。
患部に直接作用し、薬剤耐性の問題にも貢献しながら、安全で効率的な治療が期待できるこの新しいお薬は、きっと多くの歯周病で困っている方々に、明るい未来と希望をもたらしてくれることでしょう。今後のさらなる研究と実用化に、大いに期待したいですね!
