お口の不調が心の不調に繋がる?岡山大学が新たな関係性を発見
国立大学法人岡山大学の研究チームが、私たちの「お口の健康」と「心の健康」の間に、意外な関係があることを発見しました。具体的には、「お口の健康状態や、お口に関する生活の質(QOL)が良くない人ほど、1年後にうつ病と自己申告する傾向がある」ということが明らかになったのです。これは、お口の健康を良好に保つことが、うつ病の予防につながる可能性を示唆する、とても大切な発見と言えるでしょう。

研究の背景と具体的な内容
この研究は、岡山大学の学術研究院医療開発領域(岡山大学病院 歯科〈予防歯科部門〉)の竹内倫子講師、学術研究院医歯薬学域(歯)予防歯科学分野の江國大輔教授、そして東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大准教授らのグループによって行われました。スイスの学術雑誌「Journal of Clinical Medicine」に2026年1月4日にResearch Articleとして掲載されたこの成果は、今後のメンタルヘルスケアに大きな影響を与えるかもしれません。

「口腔関連QOL」という言葉、聞き慣れない方もいるかもしれませんね。これは簡単に言うと、「お口の健康が、どれだけ日々の生活の質に影響を与えているか」を示す指標のことです。例えば、「美味しく食事ができるか」「人前で口を開けて笑えるか」「口の痛みで夜眠れないことはないか」など、お口の状態が私たちの生活の満足度にどう関わっているかを評価するものです。このQOLが低い人ほどうつ病の自己申告が増えるという結果は、お口の健康が単なる身体の問題に留まらないことを示しています。
なぜお口の健康が心の健康に影響するの?
では、なぜお口の健康が心の健康にまで影響するのでしょうか?この研究ではそのメカニズムまでは詳しく解明されていませんが、きっと、いくつかの理由が考えられます。例えば、お口のトラブル(歯の痛み、歯周病、口臭など)があると、食事がしにくくなったり、人との会話を避けたり、笑顔が減ったりして、社会的な活動が制限されることがあります。そうしたことがストレスとなり、心の健康に悪影響を及ぼすのかもしれません。また、慢性的な炎症が全身に影響を与える可能性も指摘されています。
今回の研究は、「お口の健康を良好に保つことが、うつ病の発症を予防できる可能性がある」という、とても大切なメッセージを私たちに伝えています。つまり、日々の歯磨きや定期的な歯科検診といったお口のケアが、心の健康を守るための第一歩になるかもしれないのです。
研究に携わった岡山大学の竹内倫子講師は、「日々の『なんとなく気になる口の悩み』が、心の調子にも関係しているかもしれません。心の健康を保つためにも、ぜひ口の状態にも少しでも気を向けてみていただけるとうれしいです」とコメントしています。

この発見は、地域や医療現場で、お口とメンタルヘルスの両面から支援する体制を築くための重要な一歩となることが期待されています。お口の健康をケアすることが、心の健康を守り、より豊かな生活を送るための一助となる未来が、きっと訪れることでしょう。
論文情報
論 文 名: Oral Health-Related Quality of Life and Self-Reported Oral Health Status Are Associated with Change in Self-Reported Depression Status: A Cohort Study
掲 載 誌: Journal of Clinical Medicine
著 者: Noriko Takeuchi, Takayuki Maruyama, Naoki Toyama, Yuzuki Katsube, Takahiro Tabuchi
D O I: 10.3390/jcm15010376
U R L: https://www.mdpi.com/2077-0383/15/1/376
研究資金
本研究は、Mental Health Okamoto Memorial Foundation、日本学術振興会(科研費:20K10467、20K13721、20K19633、21H04856、22K02116、22H03225、23H03160、23K07492、23K16245、23K18370)、科学技術振興機構(JST、課題番号 JPMJPF2017)、厚生労働科学研究費(21HA2016、22JA1005、23EA1001、23FA1004)、横浜市立大学 戦略的研究推進事業(2021–2022、課題番号 SK202116)、こども家庭庁プログラム(JPCA20CA2053)、国立環境研究所 内部資金、東京財団政策研究所の支援を受けて実施されました。
関連情報
詳しい研究内容については、以下のリンクをご覧ください。


国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しており、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学の今後の活動にご期待ください。



