「メタボ管理」だけでは健康寿命は延びない?
生活習慣病の対策として、「血圧を下げる」「血糖値を改善する」「コレステロールを下げる」といった、いわゆる「メタボリックシンドローム」の管理が注目されがちです。でも、それだけでは十分ではないってご存知でしたか?
年齢を重ねると、筋肉や骨、関節の機能が少しずつ衰えていきます。これが「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」と呼ばれる状態で、進行すると将来的に寝たきりや介護が必要になる可能性もあるんです。
つまり、生活習慣病の管理と、筋肉や運動機能の維持は、切り離して考えるべきではありません。これらは一体として取り組むべき、あなたの健康を守るための大切な課題なんですよ。
運動療法を専門的に支える体制
菊池先生は、この運動療法の重要性を深く理解し、今年新たに「健康運動指導士」の資格を取得されました。健康運動指導士は、厚生労働省が認可した資格で、医学的な知識に基づいて、安全で効果的な運動指導ができる専門家です。
さらに、菊池先生は「日本医師会認定健康スポーツ医」や「人間ドック健診専門医・指導医」など、様々な専門医の知識と経験をお持ちです。「病気を治す医療」だけでなく、「病気を防ぐ医療」を実践していきたいという強い思いがあるそうです。
なぜ運動が生活習慣病改善に欠かせないのか
糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は、それぞれが複雑に絡み合いながら、動脈硬化を進行させていきます。その結果、脳卒中や心筋梗塞といった、命に関わる重大な病気につながってしまうんです。そして、その根っこには「代謝異常」が隠されています。
最近では、脂肪肝も単なる肝臓の病気ではなく、全身の代謝異常のサインであることが分かってきました。特に、私たちの体の中で重要な役割を果たすのが「筋肉」なんですよ。
無理なダイエットが脂肪肝を悪化させることも
「体重を減らしたい!」と、ついつい極端な食事制限をしてしまうこと、ありますよね。でも、無理なダイエットはかえって健康を損ねる可能性があるんです。
2019年にNHK BSプレミアムの番組監修をされた際、菊池先生は急激なダイエットによって脂肪肝が悪化するケースに注目されました。極端な食事制限をすると、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまい、基礎代謝が低下します。すると、エネルギーの消費量が減り、リバウンドしやすくなるという悪循環に陥ってしまうんです。
その結果、「手足は細いのに、お腹だけがぽっこり出る」という、ちょっと特徴的な体型になることがあります。これは「ダイエット脂肪肝」、医学的には「低栄養性脂肪肝」と呼ばれていて、単に体重を減らすことだけを目的にするのではなく、筋肉を維持しながら健康的に体脂肪を減らすことが、いかに大切かを示しています。
基礎代謝を上げる鍵は「筋肉」

私たちの体は、何もしなくても常にエネルギーを消費しています。これが「基礎代謝」です。基礎代謝に関わる主な臓器の割合は、肝臓が約27%、脳が約19%、そして筋肉が約18%とされています。
肝臓や脳は、残念ながら「鍛える」ことはできませんよね。でも、筋肉は違います!積極的に鍛えることができるんです。つまり、基礎代謝を高めるために、私たちが働きかけられる最大の臓器が「筋肉」なんですよ。
2023年に改訂された「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」
厚生労働省は、2023年に新しい運動ガイドラインを公表しました。それによると、成人では「1日60分以上の身体活動(歩数にすると約8,000歩)」、さらに「筋力トレーニングを週に2~3回行うこと」が推奨されています。
そして、もう一つ、とても重要なポイントがあります。それは「座りっぱなしの時間を減らすこと」です。長時間座り続ける生活は、心血管疾患や糖尿病、肥満のリスクを高めることが分かっています。たとえ運動をしていても、長時間座り続けることで、その効果が弱まってしまう可能性があると考えられているんです。
日常生活の小さな動きが健康を守る
「運動しなきゃ」と思うと、ハードなトレーニングを想像して、なかなか一歩を踏み出せない、という方もいらっしゃるかもしれません。でも、激しい運動だけが健康づくりではありません。
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階段を使う
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少し遠回りして歩く
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家事をする
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子どもや孫と遊ぶ
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横断歩道を早歩きする
こうした日常生活の中で自然に体を動かす活動は、「NEAT(非運動性熱産生)」と呼ばれています。特別な運動時間を確保できなくても、「こまめに動くこと」を意識するだけで、エネルギー消費量は増え、生活習慣病の予防につながるんですよ。
有酸素運動・筋トレ・ストレッチの3本柱
運動療法で大切なのは、一つの運動だけに偏らないことです。バランスよく組み合わせることが、生活習慣病を改善し、健康寿命を延ばすための基本となります。
- 有酸素運動: ウォーキングやジョギングなど、脂肪燃焼効果が期待できます。
- 筋力トレーニング: スクワットやランジなど、筋肉量を維持し、基礎代謝を支えます。
- ストレッチ: 柔軟性を高め、血流改善や疲労回復、ケガ予防につながります。
「運動は薬」と考える時代へ
これまで医療は、「病気になってから治療する」ことが中心でした。でも、超高齢社会を迎えた今、もっと大切なのは「病気を予防し、元気に歳を重ねること」です。そのためには、メタボ対策、ロコモ予防、筋肉量の維持、そして日常的な身体活動を総合的に考える必要があります。
運動は、単なる健康法ではなく、生活習慣病や寝たきりを防ぐための「治療」の一つなんです。薬だけに頼るのではなく、ぜひ「運動」をあなたの健康を守る大切なパートナーにしてくださいね。
講演の後半では、ウォーキングの正しいフォームや、筋肉量よりも重要な「筋肉の質」、InBodyによる体組成評価、AI姿勢解析など、さらに具体的な内容が紹介される予定です。こちらも楽しみですね!
講演者:
菊池 真大(きくち まさひろ)院長
用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック院長 / 医学博士
日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。1999年に慶應義塾大学を卒業後、米国ペンシルベニア大学消化器内科への留学を経て、国内の基幹病院で診療経験を重ね、2024年10月に「用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック」を開業。
肝臓専門医、内視鏡専門医、総合内科専門医として診療を行うとともに、日本医師会認定健康スポーツ医、そして2026年3月には健康運動指導士の資格を取得。生活習慣病や未病の予防に対し、より医学的根拠(エビデンス)に基づいた運動療法を提案している。
