はじめに:胃がん手術後の「食」を支える新プロジェクト始動!
胃がんの手術を受けた後、「何をどう食べたらいいんだろう…」と不安を感じる方は少なくありません。そんな患者さんの悩みに寄り添い、退院後の食生活を強力にサポートするため、ヘルスケアスタートアップ「おいしい健康」が、京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器外科学(研究責任者:塩﨑敦教授)とともに、新たな共同臨床研究をスタートさせました!
「デジタルヘルスを用いた胃がん切除術患者の伴走支援に関する共同臨床研究」と名付けられたこの研究は、AI献立・栄養管理アプリ「おいしい健康」を活用し、胃切除術後の患者さんが退院後も安心して日常生活を送れるよう、食の面から伴走支援を行うというもの。実は、この研究は「おいしい健康」にとって21件目となる共同臨床研究なんです。これまでの豊富な知見と経験を活かし、胃がん患者さんの早期回復とQOL(生活の質)向上を目指します。
胃がん手術後の食事、なぜそんなに大変なの?
日本では年間約11.3万人もの胃がん患者さんがいて、そのうち約9.4万人もの方が胃がん切除手術を受けていると言われています。最近では手術技術や薬物療法が進歩し、胃がんの治療成績はどんどん良くなっていますが、手術によって胃の機能の一部を失うため、患者さんは退院後の健康状態や食生活で様々な症状に悩まされることがあります。
胃切除後症候群って何?
特に問題となるのが「胃切除後症候群」と呼ばれる術後後遺症です。これは、胃を切除したことで消化吸収の仕組みが変わってしまい、様々な不調が起こる状態を指します。具体的には、以下のような症状が挙げられます。
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早期ダンピング症状:食後すぐに起こる動悸、頻脈、顔面紅潮、全身倦怠感など。食事によって急激に血糖値が変動することが原因です。
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後期ダンピング症状:食後2〜3時間後に起こる脱力感、倦怠感、めまい、眠気、集中力や意識の低下、頭痛、冷や汗、動悸、手や指の震え、頻脈など。これは、食後の血糖値が急激に上がり、その反動でインスリンが過剰に分泌されて低血糖になることが原因です。
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小胃・無胃症状:胃が小さくなったりなくなったりすることで、一度に食べられる量が減り、満腹感を感じやすくなります。
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腹痛と下痢:消化不良や食べ物が急速に腸へ移行することで起こります。
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体重減少:食事量が減ったり、栄養の吸収が悪くなったりすることで、体重が減ってしまいます。これに伴い骨格筋も減少し、体力低下につながります。
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貧血:鉄やビタミンB12の吸収が低下することで起こりやすくなります。
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骨粗しょう症:カルシウムの吸収低下が原因です。
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吻合部狭窄:手術でつないだ部分が狭くなることで、食べ物の通りが悪くなります。
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逆流性食道炎:胃酸が食道に逆流して、胸やけなどの症状を引き起こします。
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胆石症:胆汁の流れが変わることで、胆石ができやすくなることがあります。
これらの症状は、患者さんのQOLを大きく低下させるだけでなく、抗がん剤治療の継続率を下げたり、がんの再発率を上げたりすることにも関連していると報告されています。また、退院後1年経っても血糖変動が増大することが報告されており、長期的なケアの重要性がうかがえます。
食事療法がカギ!でも、これが大変…
胃切除後症候群への対処法の基本は、ずばり「食事療法」です。医師や管理栄養士さんから指導を受けながら、日々の食生活に気を配る必要があります。具体的な注意点としては、以下のようなものがあります。
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1回の食事量を減らし、1日6回以上に分けて食べる:胃が小さくなった分、一度にたくさん食べられないため、回数を増やして必要な栄養を摂ります。少量頻回食が基本です。
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糖質の吸収が早い食べ物を避ける:急激な血糖値の上昇を抑え、ダンピング症状を予防するためです。菓子パンや清涼飲料水などは控えめにしましょう。
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不溶性食物繊維が多い食品を控える:ごぼうやきのこ類など、硬い食物繊維は消化に負担をかけることがあります。特に術後早期は注意が必要です。
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揚げ物などの脂っこい料理を控える:脂肪分の多い食事は消化に時間がかかり、胃腸に負担をかけやすいです。
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逆流症状がなければ、食後10~30分ほど横になって休む:食べ物が胃から腸へ急激に流れ込むのを防ぎ、ダンピング症状の予防に役立ちます。
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よく噛んで食べる:消化を助け、胃腸への負担を減らすために、一口30回を目標によく噛んでゆっくり食べましょう。
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高タンパク・高カロリーな食事を意識的に摂る:体重減少や体力低下を防ぐため、筋肉の材料となるタンパク質やエネルギー源となるカロリーをしっかり摂ることが大切です。
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食事と水分は一緒に摂らず、食事の30~60分前か後に飲む:食事中に水分を摂りすぎると、胃が膨らんで満腹感を感じやすくなったり、食べ物が胃から腸へ早く流れすぎたりすることがあります。
これらの食事療法は、患者さん自身やご家族が毎日実践していく必要があり、医療者のサポートが届きにくい日常生活の中では、大きな負担となるのが現状です。「何をどのくらい食べたらいいの?」「この症状にはどう対処すればいい?」といった疑問や不安が尽きない中で、食事について学び、工夫し、手間をかけることは、想像以上に大変なことなのです。
アプリが「専属の栄養士」に!『おいしい健康』アプリによる伴走支援の全貌
このような背景を受け、今回の共同研究では、胃切除術後の患者さんを対象に、「おいしい健康」アプリを活用した食事支援を通じて、退院直後から回復期以降の食生活をサポートし、健康状態やQOLの改善にどれだけ貢献できるかを評価することを目的としています。
アプリが一人ひとりにぴったりの食事を提案
患者さんは「おいしい健康」アプリに登録する際に、胃がん治療によって切除した部位(全摘、噴門側、幽門側)を選択します。さらに、その時点での消化器や摂食に関する症状(例:ダンピング症状、下痢、胃もたれなど)を選ぶことで、アプリがその状態に合わせた最適なレシピを自動で提案してくれるんです。
退院直後のまだ体力が回復していない時期には、安心して食べられる簡単なレシピや、胃腸に負担の少ない食品を提案して、栄養をしっかり摂りながら体力の回復を促します。そして、アプリに記録された食事内容やレシピの検索履歴を解析することで、患者さんが「どれくらい食べられるようになったか」という喫食量を評価。その情報をもとに、徐々に通常の食事へと移行できるよう支援していきます。
困った時はいつでも相談!
「今日の献立、これで大丈夫かな?」「この食材は食べてもいいのかな?」など、調理や献立で困ったことがあれば、アプリを通じて「おいしい健康」の管理栄養士さんにいつでも相談できるのも心強いポイントです。専門家からのアドバイスを気軽に受けられることで、患者さんやご家族は安心して食事療法に取り組むことができるでしょう。

このアプリによる伴走支援は、患者さんが抱える食事の不安を軽減し、日々の生活の中で無理なく食事療法を実践できるようにすることで、術後のQOL向上に大きく貢献することが期待されます。
未来を拓くデータとエビデンス:共同研究が目指すもの
今回の共同研究では、一定期間の伴走支援を行った後、「おいしい健康」アプリを通じて取得・記録された様々な生活データ(Real Life Data)をもとに、胃切除術後の回復支援における新たなアプローチとエビデンスの創出を目指します。具体的には、体重や食事内容の変化、血糖変動、そしてQOLといった項目が評価されます。
デジタルヘルス技術を活用することで、これまで医療機関だけでは把握しきれなかった患者さんの「普段の生活」における詳細なデータを収集・分析することが可能になります。これにより、より個別化された医療やケアの提供、さらには新たな治療法の開発につながる知見が得られることでしょう。この研究から得られるエビデンスは、胃がん切除術後の患者さんのケアを大きく前進させる可能性を秘めていると言えます。
研究責任者とCEOが語る、伴走支援への熱い想い
この画期的な共同研究について、研究責任者である京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器外科学の塩﨑教授と、株式会社おいしい健康 代表取締役CEOの野尻哲也氏から、それぞれコメントが寄せられています。
京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器外科学・塩﨑教授のコメント
塩﨑教授は、胃がん切除術後の患者さんにとって、退院後の食事や栄養管理が長期にわたる重要な課題であると認識されています。そして、「本研究では、アプリを活用した食事支援により、患者さん一人ひとりに寄り添ったサポートを行い、術後QOLの向上を目指しています。日々の診療で感じている課題の解決に加え、今後の医療に役立つ新たな知見が得られることを期待しています。」と、今回の研究が患者さんの生活の質向上に貢献し、将来の医療に役立つ新たな発見につながることへの期待を語っています。
株式会社おいしい健康・代表取締役CEO野尻哲也氏のコメント
野尻CEOは、今回の臨床研究に対する自身の強い思いを、個人的な体験を交えて話しています。
「私自身は、心疾患の手術を受けた経験がありますが、退院後においてはその日の晩から『何を食べれば良いのか分からない』と困惑した記憶があります。また、2週間の入院でここまで体力が落ちるのかと驚き、体力や体調の回復、術創の痛みなどの後遺症が消失するまで1年以上を要しました。主治医からは『術後とは1週間や1ヶ月ではなく、1年単位のものと思って生活に気をつけてください』と助言を頂いたことをよく覚えています。」
この体験から、退院後の食事や体調管理がいかに重要で、かつ難しいものであるかを痛感した野尻CEO。「そのような体験も踏まえ、本研究においてはおいしい健康アプリを用いた胃切除後患者・ご家族における食事支援を実現し、患者・医療現場への貢献と新たなエビデンスの構築に邁進してまいります。」と、患者さんやそのご家族を支え、医療の発展に貢献していく強い決意を表明しています。
「おいしい健康」ってどんなアプリ?
今回の共同研究で活用されるAI献立・栄養管理アプリ『おいしい健康』は、利用者の健康状態や疾患、食の好みなどに合わせて、AIが最適な献立やレシピを提案してくれる、まさに「パーソナル栄養士」のようなサービスです。
このアプリは、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」や、各疾患の診療ガイドラインに沿った食事内容、あるいは医療機関から指示される食事療法の内容に基づいて、献立を提案してくれます。だから、予防のため、ダイエットのため、そして様々な疾患ごとの食事管理を、ご家庭で手軽に実践することができるんです。
『おいしい健康』アプリのダウンロードはこちら!
他にもこんな研究が進んでます!
「おいしい健康」では、胃がんだけでなく、様々な領域で主要な臨床研究を進めています。その一部をご紹介すると、2型糖尿病、肥満、GLP-1受容体作動薬、保健指導(行動変容)、時間栄養学・時間薬理学、脂質異常症、消化器がん(胃がん含む)、肝硬変、気管支喘息、摂食障害、COVID-19など、多岐にわたります。食と健康に関する幅広い分野で、科学的根拠に基づいたサービス開発とエビデンス創出に取り組んでいることがわかりますね。
株式会社おいしい健康が描く未来
株式会社おいしい健康は、『Food as Medicine』(食は薬なり)をコンセプトに掲げ、「世界から病気をなくす」ことを目指すヘルスケア・スタートアップです。データサイエンスに基づいた食事・栄養療法(Data science-based Nutrition:DBN)を実現することで、病気の予防や治療、そして健康維持に貢献しようとしています。
彼らが展開しているソリューションは、今回ご紹介したAI献立提案・栄養管理アプリ『おいしい健康』の他に、医療機関向けの生活指導SaaS『Kakaris(カカリス)』があります。これらのサービスを通じて、世界中の人々の健康と幸福、そして医療費などの社会課題解決に貢献することを使命としています。
会社は2016年7月に設立され、東京都中央区に本社を構えています。第一生命ホールディングス株式会社、Aflac Ventures LLC、東洋製罐グループホールディングス株式会社、味の素株式会社、株式会社スズケンなど、そうそうたる企業が株主として名を連ねており、その事業への期待の高さがうかがえます。生活者や医療機関を対象としたヘルスケアサービスの提供だけでなく、製薬・食品・生命保険業界向けのマーケティングソリューションも提供しており、幅広い事業を展開しています。
もっと詳しく知りたい方は、ぜひコーポレートサイトをチェックしてみてください。
おわりに:食を通じて、より豊かな人生を
今回の京都府立医科大学と「おいしい健康」による共同臨床研究は、胃がん切除術後の患者さんが、病気と向き合いながらも、食事の喜びを失わずに豊かな生活を送るための大きな一歩となるでしょう。
デジタルヘルスというテクノロジーが、医療の現場だけでなく、患者さんの日々の生活に深く寄り添い、具体的なサポートを提供してくれる時代が来ています。この研究が成功し、多くの患者さんの笑顔につながることを心から願っています。食を通じて、誰もが自分らしく、より健康で幸せな人生を送れる未来は、きっとすぐそこまで来ているはずです!
