開発の背景:治療は薬だけじゃない!「包括的治療」の時代へ
最近の医療では、さまざまな治療薬が開発されていますが、薬物療法だけでは解決できない課題も少なくありません。そこで注目されているのが、薬だけでなく、生活習慣の改善や行動変容を組み合わせた「包括的治療」の重要性です。
例えば、糖尿病や高血圧などの慢性疾患では、薬を飲むことと同じくらい、毎日の食事や運動といった生活習慣が治療効果に大きく影響します。しかし、医師や看護師といった医療従事者が、医療機関の外で患者さんの生活を継続的にサポートし続けるのは、時間的にも物理的にも非常に難しいのが現状です。そのため、デジタル技術やAIを活用して、患者さんの日常生活に寄り添い、治療を伴走する支援への期待が高まっています。
このような背景の中、製薬業界も大きな変化を遂げています。これまでは「新しい薬を開発し、提供すること」が主な役割でしたが、今では「患者さんの健康とQOL(生活の質)の向上」という、より本質的な価値の創出をビジョンに掲げる企業が増えています。「Beyond the pill(ビヨンド・ザ・ピル)」という言葉があるように、医薬品の提供にとどまらず、その先の患者支援活動に力を入れる動きが活発化しているのです。
多くの製薬企業が患者支援プログラム(Patient Support Program)を展開するようになりましたが、そこにはいくつかの課題も存在します。
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患者さんが「使いたい」と心から思える、継続利用を促すサービスの開発が難しい。
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患者支援活動にかけた費用に対して、どれくらいの効果があったのか(費用対効果、ROI)が不透明になりがち。
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医療分野特有の複雑な法律や規制(レギュレーション)に対応する必要がある。
株式会社おいしい健康は、これまで「食とデータサイエンスで人々の健康を支えるFood as Medicine(食を薬に)」というコンセプトのもと、製薬企業と500件以上の患者支援プロジェクトを実現してきました。その経験を通じて、「医薬品を提供するだけでなく、そこから得られるデータとエビデンス(科学的根拠)を次の治療へとつなげたい」という製薬企業のニーズの変化を強く感じ取ったのです。
このニーズに応える形で開発されたのが、今回のSaaS型患者支援プログラム「Patient Success Program(PSP)」です。

(参考論文:Mozaffarian D, et al. Nutritional priorities to support GLP-1 therapy for obesity: A joint Advisory from the American College of Lifestyle Medicine, the American Society for Nutrition, the Obesity Medicine Association, and The Obesity Society. Obesity (Silver Spring). 2025 Aug;33(8):1475-1503. doi: 10.1002/oby.24336. Epub 2025 May 30. PMID: 40445127; PMCID: PMC12304835.)
「Patient Success Program(PSP)」ってどんなもの?
今回リリースされたSaaS型患者支援プログラム「Patient Success Program(PSP)」は、株式会社おいしい健康がこれまで実施してきた20件以上の臨床研究から得られた知見を元に開発されました。このプログラムの基盤となっているのは、AI献立・栄養管理アプリ『おいしい健康』をプラットフォームとして行われた、糖尿病、肥満症、喘息などの慢性疾患から、オンコロジー(がん)や希少疾患に至るまで、幅広い疾患領域での臨床研究です。
さらに、日本医療研究開発機構(AMED)から支援を受け、予防・保健指導のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する研究開発(令和6年度予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業、課題番号24le0110033h0001)で得られた知見も活用されています。
これらの実績から、「おいしい健康」はPSPに以下の強みを反映させることができました。
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豊富なコンテンツをフックとした高い継続率:患者さんが飽きずに長く使い続けられるような、魅力的なコンテンツが充実しています。
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どのような疾患にも対応可能なアプリのカスタマイズ:さまざまな疾患や個々の患者さんのニーズに合わせて、アプリを柔軟にカスタマイズできます。
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患者情報の厳密な管理:患者さんの大切な個人情報を、高いセキュリティ基準で厳密に管理します。
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倫理審査やレギュレーションへの対応:医療分野特有の倫理的な配慮や法的規制に適切に対応しています。
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迅速なデータジェネレーションと論文化:プログラムを通じて得られたデータを速やかに収集・分析し、学術論文として発表する支援も行います。
このプログラムの大きな特徴は、SaaS(Software as a Service)モデルを採用している点です。これにより、製薬企業は初期費用を大幅に抑えることができ、ニーズや予算に応じて利用者数や実施期間を柔軟に調整できます。また、患者支援プログラムで課題となりがちな「出口戦略(いつプログラムを終了するか)」についても、SaaSモデルならではのソフトランディングが可能です。
さらに、PSPはアプリによるデジタルサポートだけでなく、管理栄養士による人的な伴走(食事相談など)も組み込まれています。これにより、多様な背景を持つ患者さん一人ひとりの細やかなニーズに応えることができるのです。

導入の流れと主な機能:患者さんの「困った」に寄り添う
このPSPは、まず製薬企業との支援契約に基づいて導入されます。その後、各疾患に特化したカスタマイズが施され、医療機関や主治医を通じて患者さんへと案内されます。患者さんはアプリの利用規約に同意するだけで、プログラムの利用を開始できます。
プログラムでは、食事や服薬など、治療生活に伴う患者さんの「困り事(ペイシェントジャーニー)」に応じた日常的な伴走と健康支援を受けることができます。「おいしい健康」は、本プログラムの導入から運用まで、きめ細やかなサポートを提供します。
具体的には、以下のような支援が含まれます。
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アンメットニーズ調査:まだ満たされていない患者さんのニーズを深く掘り下げて特定します。
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カスタマイズ設計・開発:特定されたニーズに合わせて、プログラムやアプリの機能を設計・開発します。
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レギュレーション対応:医療分野の複雑な法規制やガイドラインに適切に対応します。
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倫理審査承認:プログラム実施に必要な倫理審査の承認取得をサポートします。
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カスタマーサポート:患者さんや医療機関からの問い合わせに丁寧に対応します。
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データ解析:患者さんの同意を得て収集したデータを匿名化処理した上で統計解析し、その結果を製薬企業に提供します。これにより、治療のエビデンス構築を支援します。
おいしい健康Patient Success Program(PSP)の主な機能
PSPには、患者さんの日々の健康管理と治療支援に役立つ機能が豊富に搭載されています。(※オプション機能を含みます)
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ユーザー認証・管理:安全にプログラムを利用するための本人確認と情報管理。
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ガイドラインに基づくレシピ・献立提案:病状や個人の好みに合わせた、栄養バランスの取れた献立やレシピを提案します。
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食事記録・栄養解析:食べたものを記録することで、摂取カロリーや栄養素を自動で解析し「見える化」します。
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管理栄養士への相談:食事に関する疑問や悩みを、専門の管理栄養士にいつでも相談できます。
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運動など食事以外の伴走コンテンツ:食事だけでなく、運動や生活習慣全般に関するアドバイスや情報を提供します。
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歩数・体重・血圧・睡眠などのバイタル記録:日々の体調変化を記録し、グラフなどで視覚的に確認できます。
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症状記録:病気の症状を記録し、治療経過の把握に役立てます。
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服薬記録:薬の飲み忘れを防ぎ、適切な服薬をサポートします。
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チュートリアル:アプリの使い方を分かりやすく案内します。
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オンライン調査票:プログラムの効果測定や患者さんの声を集めるためのアンケート機能です。
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データ管理・解析:収集されたデータを安全に管理し、詳細な分析を行います。
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論文化支援:データ解析結果を学術論文としてまとめるための支援も行います。

患者さん、医療機関、製薬会社、みんなに嬉しい「三方よし」
このPSPは、患者さん、臨床現場(医療機関)、そして製薬会社という、関わる三者すべてにメリットをもたらす「三方よし」のモデルを目指しています。
【患者さんのベネフィット】治療中の日常生活をしっかりサポート
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病気があっても“食事をおいしく、暮らしをゆたかに”
- 個人の健康状態に合わせたAI献立や、管理栄養士が監修したレシピをいつでも検索できます。病気だからと諦めることなく、毎日の食事を楽しめるようになります。
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治療において大切なデータをワンストップで「見える化」
- 栄養摂取状況、活動量、服薬状況、体重、症状など、疾患ごとに重要なデータをアプリで一元管理。自分の体の状態を常に把握し、治療への理解を深めることができます。
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管理栄養士とAIが、いつもあなたのそばに
- 食事の仕方や生活習慣など、治療以外の困り事も、専門の管理栄養士やAIにいつでも相談できます。孤独を感じることなく、安心して治療に取り組めるでしょう。
【臨床(医療機関)のベネフィット】デジタルツールを活用した包括的治療の促進
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患者さんへの生活指導の効率化、アドヒアランスの向上
- デジタルツールが患者さんの日々の生活をサポートすることで、医師や看護師はより効率的に生活指導を行えます。患者さんの治療への意欲(アドヒアランス)向上にもつながります。
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栄養専門職の業務支援、人材不足への対応
- アプリが基本的な栄養管理をサポートすることで、管理栄養士の業務負担を軽減。人手不足の現場において、より専門的な相談に集中できる環境を整えます。
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患者満足や通院継続への貢献、医学管理料等の業務支援
- 手厚い患者支援は、患者さんの満足度を高め、通院継続にも貢献します。また、生活習慣病管理料などの医学管理料算定に必要な情報収集や記録作成の支援も期待できます。
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臨床成績の向上、学会発表、論文化
- 患者さんの生活データが収集・分析されることで、治療効果の評価がより明確になり、臨床成績の向上に寄与します。その結果を学会発表や論文としてまとめる支援も得られます。
【製薬会社のベネフィット】医療への貢献と事業成長の両立
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真のアウトカムへの貢献、製品評価の向上
- 医薬品の提供だけでなく、患者さんのQOL向上や治療成功という「真のアウトカム」に貢献することで、製品の価値や評価が高まります。
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低コストでのPatient support programの導入、Exit(縮小・終了)
- SaaSモデルにより、従来のプログラムに比べて初期費用を大幅に抑えられ、ニーズに合わせて柔軟に導入・運用・終了が可能です。
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迅速なデータジェネレーション、エビデンス構築・発信力強化
- 患者さんのリアルワールドデータを効率的に収集・分析し、治療効果のエビデンスを迅速に構築。その知見を広く発信する力を強化できます。
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生活行動、服薬データを組み合わせた「デジタルフェノタイプ分析」と治療支援モデルの構築
- 患者さんの生活習慣や服薬データを詳細に分析することで、一人ひとりの特性(デジタルフェノタイプ)を把握。個別化された治療支援モデルの構築や、より効果的な治療法の確立に貢献します。
今後の展開:患者さん中心医療の新しいカタチへ
このPSPは、すでに複数の製薬企業とともにリリースに向けた準備が進められています。今後は、糖尿病や肥満症といった慢性疾患だけでなく、がん(オンコロジー)や希少疾患など、さらに幅広い領域への展開を目指しています。
株式会社おいしい健康は、この「Patient Success Program(PSP)」を通じて、「患者さん中心医療の新たなプラットフォーム」としての地位を確立し、より多くの患者さんの健康と生活の質の向上に貢献していくことを目指しています。
AI献立・栄養管理アプリ『おいしい健康』の概要
本プログラムの基盤となっているAI献立・栄養管理アプリ『おいしい健康』は、健康状態や疾患、食の好みなどに合わせて、AIが最適な献立・レシピを提案するパーソナライズ食事管理サービスです。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」や各種診療ガイドライン、医師の食事指示に基づき、予防、ダイエット、疾患別の食事管理をご家庭で手軽に実践できるよう支援します。
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アプリ名:『おいしい健康』
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Google Play Store:https://oishi-kenko.com/katgut/android-kenko_google-play
株式会社おいしい健康について
株式会社おいしい健康は、『Food as Medicine』をコンセプトとし、データサイエンスに基づく食事・栄養療法(Data science-based Nutrition:DBN)の実現を通じて「世界から病気をなくす」ことを目指すヘルスケア・スタートアップです。アプリ『おいしい健康』のほか、医療機関向け生活指導SaaS『Kakaris(カカリス)』を展開し、世界80億人の健康と幸福、そして医療に関わる社会課題の解決に貢献しています。
本リリースに関するお問い合わせ
株式会社おいしい健康 広報担当
E-mail:press@oishi-kenko.com
