家族性地中海熱(FMF)とは?繰り返す発熱と腹痛・胸痛の原因となる遺伝性疾患
原因不明の発熱を繰り返していませんか?「数日続く発熱が、月に1〜2回くらいの頻度で繰り返される」「強い腹痛や胸痛と一緒に熱が出る」「血液検査では炎症反応は上がるが、感染症の証拠が見つからない」——このような症状を経験している方は、家族性地中海熱(Familial Mediterranean Fever:FMF)という病気の可能性があります。「地中海」という名前から海外の病気と思われがちですが、実は日本人にも一定数存在することがわかってきており、近年診断例が増えています。
家族性地中海熱(FMF)とは
家族性地中海熱は、MEFV遺伝子の変異によって起こる自己炎症性疾患(体の炎症を抑える仕組みが上手く働かない病気)の代表格です。原因不明の発熱と漿膜炎(腹膜・胸膜・関節滑膜などの炎症)を繰り返すのが特徴です。
主な特徴
FMFの典型的な発作
発熱発作の特徴
発熱に伴う症状(漿膜炎)
発熱と同時に、以下のいずれかの炎症症状が出るのが特徴です。
典型的でない症状(非典型例)
日本人FMF患者では、典型的な発作よりも以下のような非典型例が多いことがわかっています。
そのため、「教科書通り」でないからといってFMFを否定できないのが、診断を難しくしている理由のひとつです。
なぜ起こるのか——病気のメカニズム
MEFV遺伝子はパイリン(pyrin)というタンパクをコードしています。パイリンは免疫細胞(特に好中球)の炎症反応を抑制する役割を担っています。
MEFV遺伝子が変異すると、パイリンの機能異常により炎症を起こす仕組み(インフラマソーム)が過剰に活性化し、炎症を引き起こす物質(IL-1βなどの炎症性サイトカイン)が大量に産生されます。これが発熱と漿膜炎を引き起こします。
つまりFMFは、感染症や自己免疫疾患(自分を攻撃する抗体ができる病気)とは異なり、「生まれ持った免疫システムの制御不全」によって起こる病気です。これが「自己炎症性疾患」と呼ばれる理由です。
診断——見逃されやすい疾患
FMFは知名度が低いため、診断までに平均5〜10年かかると言われています。発熱を繰り返すたびに「風邪」「ウイルス感染」と診断されたり、腹痛で何度も救急搬送されたり、なかには虫垂炎の手術を受けてしまう例もあります。
診断基準(Tel-Hashomer基準)
主要症状
副症状
主要症状1つ以上、または主要1つ+副症状2つで確定診断となります。
検査
ただし、日本人FMFでは遺伝子検査で明らかな変異が見つからないこともあるため、最終的には症状を総合的に判断した診断が重要です。
似た症状を起こす他の病気
FMFと似た症状をきたす病気は多数あります。
治療——コルヒチンが第一選択
コルヒチン
FMFの治療の中心はコルヒチン(痛風治療薬としても使われる薬)です。
コルヒチン抵抗性のFMF
コルヒチンで効果が不十分な場合(5〜10%)には、以下の治療を検討します。
発作時の対症療法
放置するリスク——AAアミロイドーシスの合併
未治療のFMFで最も重要な合併症がAAアミロイドーシスです。
つまり、診断さえつけばコルヒチンで予後を大きく改善できる病気なのです。
受診の目安——こんなときは専門医への相談を
FMFは指定難病(番号266)に登録されており、認定されると医療費助成の対象になります。
日常生活で気をつけること
まとめ
家族性地中海熱(FMF)は、MEFV遺伝子変異による自己炎症性疾患で、日本人にも一定数存在します。典型例より非典型例(発熱のみ・短時間など)が多いのが特徴です。
診断までに数年〜10年かかることが珍しくない、見逃されやすい病気ですが、原因不明の反復する発熱と漿膜炎を見たら必ず疑うべき疾患の一つです。
治療はコルヒチンの生涯内服が基本で、発作予防とAAアミロイドーシス予防の両方の意味で重要です。指定難病として医療費助成の対象にもなっています。
「ただの繰り返す風邪」と思っていた症状の中に、隠れたFMFがあるかもしれません。気になる症状がある方は、内科または膠原病・リウマチ科にご相談ください。
