ずっと抱えてきた「生きづらさ」の正体、知りたくない?

「なんだかいつも調子が悪い」「つい感情的になっちゃう」「自分が嫌い」「人間関係がしんどい」——もしあなたがそんなふうに感じているなら、それは決して「あなたが悪い」わけではありません。

もしかしたら、その「生きづらさ」は、子どもの頃のつらい経験が、知らず知らずのうちにあなたの心に重荷として残っているせいかもしれません。そんな「どうしようもない」と諦めていた感情の根源を科学的に解き明かし、人生を再建するための具体的な方法を教えてくれる一冊が、2026年3月19日(木)にKADOKAWAから発売されます。その名も『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』です。

書籍表紙

この本は、「生きづらさ」の本当の原因が、あなたの性格ではなく、「小児期逆境体験(ACEs)」にあることを、科学的な視点から紐解いていきます。そして、個人の意志の力だけに頼るのではなく、生活環境を見直す「環境調整」というアプローチで、どのようにして心の重荷を手放し、人生を立て直していけるのかを、優しく、そして具体的に教えてくれるんです。

世界の研究者が驚いた「ACEs(小児期逆境体験)」って何?

あなたの「生きづらさ」の根底にあるかもしれない「ACEs(Adverse Childhood Experiences)」という考え方。これは、今から30年ほど前、1990年代のアメリカで行われた大規模な追跡調査で発見された概念です。

ことの発端は、ある肥満治療プログラムでの不思議な出来事でした。順調に体重を減らしていた患者さんたちが、なぜか途中で治療をやめてしまったんです。詳しく調べてみると、治療を途中でやめてしまった人たちの多くが、子どもの頃に深刻な心の傷を抱えていたことがわかったのです。

彼らにとって、肥満という状態は、もしかしたら性的・身体的な危険から自分を守るための、無意識の「鎧」として機能していたのかもしれません。この驚きの発見は、子ども時代のつらい経験が、成人してからの心や体の健康、さらには社会的な成功にまで大きく影響することを示唆しました。

ACEsスコアが高いとどうなるの?

ACEsの研究では、子ども時代に経験する可能性のある10種類の逆境体験(虐待、ネグレクト、家庭内の問題など)をリストアップし、それぞれの経験があったかどうかで「ACEsスコア」を計算します。このスコアが高いほど、大人になってからの様々なリスクが高まることが統計的に証明されているんです。

たとえば、うつ病や心臓病といった病気にかかるリスクが跳ね上がったり、最終学歴や生涯収入といった「社会的な成功」にも大きな影響が出たりすることがわかっています。これは単なる「つらい思い出」とか「生きづらさ」といった個人的な問題に留まらず、社会全体で考えるべき、とても大切な課題なんです。

あなたはいくつ当てはまる? ACEsとなる10の体験

ACEsの研究では、主に家庭内で起こる10種類の出来事が「逆境的小児期体験」として整理されています。これらは大きく3つのグループに分けられます。

ACEsの10の体験

(1) 虐待グループ

  • ① 情緒的虐待: 言葉や態度で子どもの心を傷つけ続けることです。例えば、毎日怒鳴られる、「お前なんか生まれてこなければよかった」と否定される、馬鹿にされる、恥をかかされる、脅されるといった状況が長く続くことを指します。たとえ一度も殴られなくても、このような言葉や態度だけで、子どもは「自分には価値がない」「世界は危険だ」という感覚を深く植え付けられてしまうことがあります。

  • ② 身体的虐待: たたく、蹴る、突き飛ばす、物で殴る、やけどさせる、首を絞める、激しく揺さぶるなど、体に直接痛みや傷を与える行為です。「しつけ」の名目で行われていても、繰り返し行われて怪我をする、あるいは怪我をしてもおかしくないほど強い力が加えられている場合は、身体的虐待とされます。

  • ③ 性的虐待: 子どもに対して性的な行為を強要したり、見せたり、不適切な接触をしたりすること全般を指します。これは子どもの心身に非常に深い傷を残します。

(2) ネグレクトグループ

  • ④ 身体的なネグレクト: 子どもが健康で安全に過ごすために必要な、物理的なケアが十分に提供されないことです。食事を与えない、不潔な環境に置く、適切な医療を受けさせない、危険な場所に放置するといった状況が含まれます。

  • ⑤ 情緒的なネグレクト: 子どもの心の成長に必要な愛情や関心、精神的なサポートが十分に与えられないことです。子どもの感情を無視する、話を聞かない、抱きしめたり慰めたりしない、子どもを透明人間のように扱うといった状況です。子どもは孤立感や無価値感を抱きやすくなります。

(3) 家庭内の機能不全グループ

  • ⑥ DV(ドメスティック・バイオレンス): 家庭内で、親や保護者の一方が他方に暴力を振るう状況です。子ども自身が直接暴力を受けていなくても、目の前で暴力が行われることを見るだけでも、子どもは強い恐怖や不安を感じ、心に大きな影響を受けます。

  • ⑦ 家族の物質依存: 家族の誰かがアルコールや薬物などの物質に依存している状況です。依存症の家族がいる家庭では、安定した生活が送りにくく、子どもは常に不安や緊張を抱えることになります。また、依存症の親が子どもに適切なケアを提供できないことも少なくありません。

  • ⑧ 家族の精神疾患: 家族の誰かが重度の精神疾患を抱えている状況です。精神疾患を持つ親や家族がいる場合、子どもは親の病状に振り回されたり、親のケアを担ったりすることがあり、子どもらしい生活を送ることが難しくなることがあります。

  • ⑨ 両親の離婚・別居: 両親の離婚や別居は、子どもにとって大きな環境の変化であり、精神的なストレスとなることがあります。特に、離婚に至るまでの過程が複雑であったり、離婚後も親同士の対立が続いたりする場合、子どもの心に深い傷を残すことがあります。

  • ⑩ 家族の逮捕・収監: 家族の誰かが逮捕されたり、刑務所に収監されたりする状況です。これは子どもにとって、大きな衝撃と恥、そして将来への不安を引き起こす可能性があります。家庭の経済状況にも影響を及ぼし、生活が不安定になることも少なくありません。

これらの体験が「1項目1点」として計算され、合計点が高いほど、大人になってからの生きづらさにつながる可能性が高まると考えられています。

「生きづらさ」はあなたの責任じゃない!環境を変えて、心を回復モードに切り替えよう

「なんだかんだ言っても、結局は自分の努力次第でしょ?」

そう思ってしまう人もいるかもしれません。でも、ACEsからの回復の鍵は、実は「意志」の力だけではないんです。むしろ、「環境調整」という具体的な技術がとても大切だと、この本は教えてくれます。

ACEsを経験した人の脳は、子どもの頃のつらい経験から、常に「戦場」にいるかのように認識し、ストレスホルモンを出し続ける「警戒モード」に固定されてしまっていることがあります。この状態だと、いくら素晴らしいカウンセリングを受けても、その効果がストレスによって流されてしまい、なかなか回復が進まない、ということが起こりうるんです。

具体的な「環境調整」ってどんなこと?

この本がおすすめしているのは、まずは物理的な安全と生活の基盤をしっかり固める「福祉的アプローチ」です。難しく聞こえるかもしれませんが、日常の中でできることから始めてみましょう。

  1. 安全な眠りの確保: 鍵のかかる、安心して眠れる部屋でぐっすり眠ることは、脳の炎症を鎮める医療的な効果があると言われています。安心して眠れる場所を確保することは、心の回復の第一歩です。
  2. デジタル・デトックス: 夜寝る前にスマートフォンでSNSを見たり、不安を煽るようなニュースを追いかけたりしていませんか?夜間のデジタルデバイスの使用を控えることで、心を刺激する情報を物理的に遮断し、脳を休ませてあげましょう。安心できる情報を意識的に選ぶことも大切です。
  3. 適切な依存先の分散: 「自立」というと「誰にも頼らないこと」と思いがちですが、この本では「依存先を増やすこと」と定義しています。一人で抱え込まず、専門家(カウンセラーや医師など)や行政サービス(福祉窓口など)、信頼できる友人など、安全な「外側のつながり」をたくさん作ることが大切です。困ったときに「ここなら頼れる」という場所を複数持っておくことで、心の負担がずっと軽くなります。

「自分を変えなきゃ」と焦る前に、「自分を取り巻く環境」を戦略的に選び直し、整えていく。この具体的で論理的な手法こそが、負の連鎖を断ち切り、穏やかな日常を取り戻すための最も確実な一歩となるでしょう。

あなたは一人じゃない!レジリエンスを信じて育もう

最近よく耳にする「レジリエンス(回復力)」という言葉。この言葉を聞くと、「どんなことがあっても平気でいられる、特別に強い人」を想像するかもしれませんね。でも、心理学や公衆衛生で言うレジリエンスは、ちょっと違うんです。

レジリエンスとは、「一度は落ち込んでも、時間をかけて自分の生活や役割に戻っていく力」のこと。つまり、つらいことがあっても、そこから立ち直り、元の自分に戻っていく、あるいは新しい自分として進んでいく力のことなんです。

そして、この力は、生まれつきの性格で決まるものではありません。子どもの頃はもちろん、大人になってからでも、意識して育んでいくことができるんです。

レジリエンスを育む

小さな行動の積み重ねが、回復力を支える

「レジリエンスを育てる」と聞くと、「大きく自分を変えなきゃ!」と身構えてしまうかもしれません。でも、研究が示しているのは、むしろ基本的な、そして「小さな行動」の積み重ねが大切だということです。

一番のポイントは、「調子が悪い自分をどう扱うか」です。失敗したり、体調を崩したりしたときに、自分を厳しく責めてしまう人と、事実を受け止めつつも自分にある程度の優しさを向けられる人では、その後の行動に大きな違いが出ることがわかっています。

自分を責めるよりも、「それでもよく頑張っているよ」「次に改善できそうな点はどこかな?」と、自分に対して穏やかに声をかけられる人のほうが、その後の行動改善に取り組みやすくなると言われています。毎日、寝る前や朝に「自分は頑張っている」という言葉を自分にかけるだけでも、きっと心の状態は変わっていくはずです。

「自分を尊重してくれる人との関係」「安心して過ごせる場所」「小さな成功体験(PCEs)」を少しずつ増やしていくことで、今のあなたのレジリエンスを育て直すことは十分に可能です。一人で抱え込まず、周りの力を借りながら、一歩ずつ進んでいきましょう。

本の概要と著者紹介

書籍情報

  • 書名:大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方

  • 著者:和田一郎

  • 定価:1,760円(本体1,600円+税)

  • 発売日:2026年3月19日(木)

    • 電子書籍も同日配信予定です。
  • 判型:四六判

  • 頁数:224頁

  • ISBN:978-4-04-608007-3

  • 発行:株式会社KADOKAWA

KADOKAWAオフィシャル書誌詳細ページはこちら:https://www.kadokawa.co.jp/product/322511000483/

著者プロフィール

和田一郎(わだ・いちろう)

社会福祉士、精神保健福祉士。
筑波大学大学院人間総合科学研究科を修了し、博士(ヒューマン・ケア科学)の学位を持っています。

茨城県職員として福祉事務所や児童相談所などに勤務した後、2013年度からは社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所主任研究員として研究活動を開始。2022年からは獨協大学国際教養学部教授を務めています。専門はデータサイエンス、子ども論、社会福祉マクロ政策など、多岐にわたる分野で活躍されています。

X(旧Twitter)アカウント:@ichirou_wada

最後に

もしあなたが今、「生きづらさ」を感じていて、それがずっと変わらないと諦めているなら、この本はきっと、新しい光を見つけるきっかけになるでしょう。

あなたの心にずっとあった重荷は、あなたのせいではありません。そして、それを手放す方法は、必ずあります。この本が、あなたが自分らしく、穏やかな毎日を送るための一助となることを願っています。