希少疾患って、診断が本当に難しいの?総合診療医の先生たちの実感
まず、今回の調査では、総合診療医の先生方に「希少疾患が確定診断に至るまでの期間は、一般的な疾患と比べて遅れやすいと感じるか」を尋ねています。
その結果、なんと9割もの総合診療医の先生が「遅れやすい」と回答しました。これは、「とても感じる」が48%、「やや感じる」が42%という内訳です。この数字は、希少疾患の診断の難しさを、医療現場の最前線にいる先生方が肌で感じている証拠と言えるでしょう。

この結果から、私たちが診断に時間がかかっていると感じるのは、決して気のせいではないことがわかります。先生方も同じように感じている、という事実は、少しだけ心の負担を軽くしてくれるかもしれませんね。
総合診療医の先生たちは、希少疾患にどう向き合ってる?
診断が難しいと認識されている希少疾患ですが、総合診療医の先生方は日々の診療でどのように向き合っているのでしょうか。
8割以上の先生が日常的に希少疾患を意識している!
驚くべきことに、「日常診療において希少疾患を鑑別の対象として意識する頻度」を尋ねたところ、「常に意識している」が14%、「症例・症状によっては意識する」が68%となり、8割以上の総合診療医が希少疾患も念頭に置いて診療していることが明らかになりました。

「希少」という言葉のイメージとは裏腹に、多くの先生が「もしかしたら希少疾患かもしれない」と考えてくれているというのは、私たち患者にとってとても心強い情報ですよね。見過ごされやすい症状の中にも、先生方が光を当てようとしてくれていることが伝わってきます。
診断の「ゲートキーパー」としての強い自覚
さらに、「希少疾患の診断遅れを減らすために、総合診療医の最も重要だと思う役割」については、46%の先生が「初期評価・鑑別のゲートキーパー」と回答しました。また、24%が「診断プロセスのマネジメント」と回答しており、約7割の先生が、自身を診断の「起点」や「診断プロセス全体をつなぐ役割」として認識していることがわかります。
「ゲートキーパー」とは、まさに患者さんが最初に受診したときに、幅広い可能性の中から希少疾患の可能性を見つけ出し、専門医へとつなぐ大切な役割です。これは、様々な症状を総合的に診る総合診療医だからこそできる、非常に重要な役割と言えるでしょう。
「早期発見に貢献できる」という強い意欲
「総合診療医は希少疾患の早期発見に貢献できると思うか」という質問に対しては、76%の先生が「貢献できる」と回答しました。これは、「強く思う」(17%)と「やや思う」(59%)を合わせた数字です。

この結果は、たとえ経験する機会が限られる希少疾患の分野であっても、総合診療医の先生方がご自身の役割を理解し、早期診断に貢献しようとする高い意識を持っていることを示しています。私たち患者としては、この意欲に大きな希望を感じますね。
でも、実際はなかなか診断にたどり着けない現実も…
先生方の高い意識が明らかになった一方で、現実にはまだまだ課題があることも今回の調査で浮き彫りになりました。
希少疾患の診断経験は「4人に1人」
年間1例以上、希少疾患の診断プロセスに関与した経験がある総合診療医は、実は約4人に1人(24%)にとどまっています。半数以上は「過去に診断したことはない」(38%)か「わからない」(21%)と回答しています。

意識は高くても、実際に希少疾患の症例に遭遇する機会は限られているため、経験を積むのが難しいのが現状です。これは、希少疾患が文字通り「希少」であることの裏返しでもありますね。
診断が遅れる原因はどこにある?
では、なぜ希少疾患の診断は遅れやすいのでしょうか。先生方が感じている主な原因を見てみましょう。

最も多く挙げられたのは、「希少疾患は症状が多様で一般的な疾患と類似している場合もあり、鑑別に挙げにくいいため」(66%)という点です。確かに、風邪のような症状から始まる難病もあると聞きますよね。次に多かったのが、「希少疾患に関する医師の経験・知識が不足しており、疾患を想起しにくいいため」(65%)です。これは、先ほどの「診断経験が少ない」という現実とつながっています。
その他にも、「希少疾患が疑われた際に、適切な専門医・専門施設につながるまでの時間がかかりやすいため」(47%)や、「確定診断に必要な検査が、実施までに時間を要することがあるため」(36%)といった、医療連携や検査体制に関する課題も挙げられています。
私たちは「病院に行っても理解してもらえない」と感じることがありますが、先生方もまた「診断が難しい」と感じている。この相互理解が、今後の改善にはとても大切になりそうです。
じゃあ、どうすればもっと早く診断できるの?
診断が難しい希少疾患の早期診断を進めるためには、どんな支援が必要だと先生方は考えているのでしょうか。

最も必要とされたのは、「総合診療医のスキルアップ」(63%)でした。やはり、先生方自身がもっと知識や経験を深めたいと考えていることがわかります。次に多かったのが、「非特異的症状でも希少疾患を疑えるような診療ガイドライン・鑑別支援ツールの整備」(49%)です。これは、先生個人の努力だけでなく、知識や判断をサポートする「仕組み」が必要だという認識を示しています。
筑波大学附属病院 総合診療科長の前野哲博教授も、今回の調査結果を受けて次のようにコメントしています。
「希少疾患は、個々の患者数は限られるものの疾患の種類が数千にも及ぶため、総患者数は決して『希少』とは言えない規模に達しています。しかし、その専門性の高さや症状の多様性から、適切な診断に至るまでに平均数年を要することも少なくないという社会課題を抱えています。こうした状況の中、今回の調査からは、多くの総合診療医が日常診療において希少疾患を意識し、自らを診断の『ゲートキーパー』として位置付けながら、早期発見に貢献しようとしている姿勢がうかがえます。
一方で、希少疾患は診療の中で遭遇する機会が限られるため、総合診療医が実地で経験を積みにくい特性があります。そのため、希少疾患の存在は意識しても、日常的に膨大なcommon diseaseの診療にあたる中で想起が難しく、診断に時間を要する状況も生じているのだと考えられます。今後は、医師個人の研鑽に加え、知見を集約・共有できる仕組みの整備を並行して進めることが求められていると感じます。」
前野教授のコメントからも、個人のスキルアップと同時に、医療界全体で知見を集めて共有できるような仕組みが不可欠であることが強調されています。私たち患者にとっても、こうしたシステムが整備されることは、早期診断への大きな一歩となるでしょう。
私たち患者にできること、そしてこれからの期待
今回の調査結果から、総合診療医の先生方が、希少疾患の患者さんのことを真剣に考え、早期発見に貢献したいという強い気持ちを持っていることが伝わってきました。診断に時間がかかって不安な日々を過ごしている私たちにとって、これは本当に心強いメッセージです。
もちろん、すぐにすべての問題が解決するわけではありませんが、医療現場では確実に変化が起きています。
株式会社ケアネットと株式会社マクロミルケアネットは、今回の調査で得られた洞察を活かし、医師・医療者向けのプラットフォームを通じて、希少・難治性疾患に関する知見の集約と共有をさらに強化していくとのことです。個人の経験を医療界全体の知見へとつなげる「知見の集積拠点」としての役割を強化していく、という今後の展望は、私たち患者にとっても希望の光となるでしょう。
具体的には、医師会員限定ですが、CareNet.comでは200以上の希少疾患の基本情報や診断・治療に関する解説コンテンツを掲載している「希少疾病ライブラリ」を提供しています。
また、ケアネット公式LinkedInでも「希少・難治性疾患を知る」という情報が配信されています。
こうした取り組みが、私たち患者がより早く、適切な診断にたどり着ける未来へとつながることを期待したいですね。
まとめ
希少疾患の診断は、患者さんにとっても、医療従事者にとっても、大きな課題です。しかし、今回の調査で、総合診療医の先生方が高い意識と意欲を持って、私たち患者と向き合ってくれていることがわかりました。
診断が遅れる原因が明らかになり、それを解決するための「スキルアップ」と「知見を共有する仕組み」の必要性も明確になりました。医療現場が一体となって、希少疾患の早期診断に向けて動き出していることは、私たち患者にとって大きな希望です。
もし今、原因不明の症状で悩んでいるなら、今回の記事を読んで少しでも前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいです。医療は日々進化しています。きっと、あなたの症状も理解され、適切な診断にたどり着ける日が来ると信じています。
