病気と向き合うあなたへ:日本の医療の「今」と「未来」を一緒に考えよう
病気と診断されたとき、あるいは慢性的な症状と日々向き合っているとき、私たちの生活は大きく変わりますよね。突然の診断に戸惑ったり、治療の選択肢に悩んだり、そして「この先の医療はどうなるんだろう?」という漠然とした心配を抱えることもあるかもしれません。特に、医療費や医療サービスの変化は、日々の生活に直結するだけに、不安も大きいことでしょう。
そんな病気と闘う皆さんにとって、日本の医療が今どのような状況にあり、これからどうなっていくのかを知ることは、とても大切なことです。2026年2月13日、特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI)が「2026年 日本の医療に関する世論調査」の結果を公表しました。この調査は、全国の20歳以上の男女1,000名を対象に行われたもので、私たちが普段感じている医療への思いや、将来への考えが詰まっています。
今回は、この調査結果から見えてきた日本の医療の「今」と「未来」について、病気で困っている皆さんの視点に立って、一緒に考えていきたいと思います。難しい専門用語は避け、カジュアルな言葉で、皆さんの心に寄り添うような記事を目指します。

日本の医療、みんなは満足してる?質の高さは評価されつつも、制度への参加には課題が
まず、皆さんが日々利用している医療サービスや、それを支える医療制度について、国民全体がどのように感じているかを見ていきましょう。病気になったとき、安心して治療を受けられるかどうかは、医療の質にかかっていますから、この点は特に気になりますよね。
この調査によると、実に約7割もの人が「診断・治療等の技術の質」「医療の安全性(医療の事故防止)」「医療機関や治療方法についての情報」「治療方針への患者自身の意見の反映」といった項目に対して、「満足」または「大いに満足」と回答しています。これは、日本の医療従事者の皆さんの専門性や、医療機関の安全管理体制、そして患者への情報提供や意思決定への参加を尊重する姿勢が、多くの国民から高く評価されている証拠と言えるでしょう。病気と向き合う中で、質の高い医療を受けられることは何よりも心強いことですし、医師や看護師の方々との信頼関係は、治療を進める上で欠かせません。
しかし、一方で気になる点も浮き彫りになりました。「制度決定への市民参加の度合い」については、「満足」と「大いに満足」を合わせた回答が4割を下回っています。これは、多くの人が医療制度の決定プロセスに自分たちの声が十分に反映されていないと感じていることを示唆しています。
病気になったとき、私たちは医療の受け手として、制度に大きく影響されます。例えば、治療費の自己負担割合、受けられる医療サービスの範囲、新しい治療法の導入など、制度が私たちの生活に直接関わってきますよね。もし、自分たちの意見が制度に反映されにくいと感じるなら、それはとてももどかしいことです。私たちは、医療の質だけでなく、それを支える制度にも目を向け、自分たちの声が届くような仕組みについて、もっと関心を持つ必要があるのかもしれません。

健康管理の意識は高いのに、行動が伴わない?病気になってから気づく「健康のありがたみ」
次に、皆さんの健康に対する意識と、実際の行動について見ていきましょう。病気と診断されると、「もっと早く健康に気をつけていればよかった」と後悔する方も少なくないのではないでしょうか。だからこそ、日々の健康管理がどれほど大切か、身をもって感じているはずです。
調査では、約8割もの人が「健康の維持や病気の予防のために、健康管理を自分自身で取り組むべき」だと考えていることがわかりました。これは素晴らしい意識です。日々の食事、睡眠、運動など、健康管理に「非常に気をつけていた」または「やや気をつけていた」と回答した人も7割に上ります。多くの人が、自分の健康は自分で守るべきだという強い意思を持っていることがわかります。

しかし、一方で、この高い意識と実際の行動には少しギャップがあるようです。「過去1年間に健診を受けた」と回答した人は約6割にとどまっています。健康管理の意識が高いにもかかわらず、病気の早期発見や予防に直結する健診の受診率には、まだ改善の余地があるのが現状です。
「忙しいから」「まだ大丈夫だと思っていたから」といった理由で、ついつい健診を後回しにしてしまった経験、皆さんにもあるかもしれません。特に病気になってから、「もしあの時、健診を受けていれば…」と感じたことはありませんか?
自分の健康データをアプリや手書きで記録している人は約4割。その目的としては、「自分の体の状態把握」「日々の生活習慣の見直し」「診察時に医師へ共有」の順に多く挙げられています。これは、自分の健康を「見える化」することで、病気の早期発見や、医師とのコミュニケーションに役立てようとする意識の表れと言えるでしょう。
病気と向き合うことは、自分の体と心に真剣に向き合うことでもあります。これからの健康管理は、単に治療を受けるだけでなく、日々の生活習慣を見直し、自分自身の体の状態を把握し、積極的に医師と情報を共有する「セルフメディケーション」の意識がますます重要になってくるでしょう。病気の治療と並行して、自分らしい健康な生活を取り戻すために、できることから始めてみませんか。
「医療サービス維持のためなら、自己負担増もやむなし」が約半数。病気の当事者としての本音は?
さて、ここからは少し重いテーマですが、医療制度の将来像、特に「給付と負担」について皆さんがどう考えているかを見ていきましょう。病気で治療を受けている皆さんにとっては、特に切実な問題だと思います。医療費の負担は、治療の継続や生活設計に大きく影響しますから、この話題は避けて通れません。
調査の結果、約半数(49.1%)の人が「受けられる医療サービスを保つために、一人ひとりの負担が今より増えても仕方ない」と回答しました。これは、「医療の質を維持するためなら、ある程度の負担増は受け入れる」という国民の意思が示されたものと解釈できます。多くの人が、質の高い医療サービスが維持されることの重要性を理解し、そのためなら自分たちの負担が増えることも覚悟している、ということですね。

もし負担が増えるとしたら、どのような方法が望ましいかについては、「窓口負担」が最も多く、次いで「健康保険料」が挙げられました。これは、医療費の負担増が避けられないという現実を多くの人が認識している中で、具体的な負担方法についても考えていることを示しています。日々の生活の中で、どれくらいの負担なら受け入れられるのか、皆さんそれぞれに考えがあることでしょう。
特に注目すべきは、定期的に通院している人とそうでない人との意識の違いです。定期的な通院をしている人の約6割が「受けられる医療サービスを保つための負担増は仕方ない」と回答しているのに対し、通院をしていない人では約4割にとどまっています。

この差は、病気と日々向き合い、医療サービスを実際に利用している人ほど、その価値を実感し、維持することへの切実な願いが強いことを物語っています。定期的な通院によって、医療の恩恵を肌で感じているからこそ、「今の医療サービスを失いたくない」という思いが強くなるのは自然なことかもしれません。病気で困っている皆さんにとっては、今の医療サービスが維持されることが、治療の継続や生活の質に直結するため、この結果は深く頷けるものではないでしょうか。
医療サービスが縮小されるとしたら、何を優先する?賢い選択で医療を守る
もし、将来的に医療サービスが縮小されるという、厳しい選択を迫られた場合、どのような対応が優先されるべきだと考えられているのでしょうか。これは、病気と闘う皆さんにとって、将来の治療の選択肢に直接関わる、非常に重要な問いです。
「一人ひとりの負担を増やさないために、受けられる医療サービスが下がっても仕方ない」または「一人ひとりの負担を今より減らすために、受けられる医療サービスは下げたほうがよい」と回答した人たちに尋ねたところ、最も多かったのが「処方薬について、高価な先発品を制限し、ジェネリック医薬品の利用を促す」という意見で、約5割を占めました。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分で作られており、品質や効果は同等でありながら、開発コストが抑えられるため、価格が安いという特徴があります。病気で継続的に薬を服用している皆さんにとって、毎月の薬代の負担は決して小さくありません。ジェネリック医薬品の利用促進は、個人の医療費負担を軽減するだけでなく、医療費全体の抑制にもつながり、結果として多くの人が医療を受け続けられるようにするための現実的な選択肢として、広く受け入れられていると言えるでしょう。医師や薬剤師と相談して、積極的にジェネリック医薬品を選ぶことも、私たちにできる医療費削減への貢献の一つです。
次に多かったのが、「病状を良くする効果が乏しい治療(例:風邪への抗菌薬など)を制限する」という意見で、約3割でした。これは、医療資源をより効果的・効率的に活用し、本当に必要な医療に集中すべきだという考えの表れです。例えば、風邪に抗菌薬は効かないことが多いとされていますが、つい処方をお願いしてしまうこともあるかもしれません。このような「低価値医療」を見直すことで、限りある医療資源を有効活用し、本当に困っている患者さんのために使うべきだという国民の意識が伺えます。
一方で、「市販薬と似た効果がある処方薬について、医療保険の補助の対象から外し、全額を患者負担にする」という意見は2割にとどまりました。これは、一般的な病気であっても、医療保険の補助がなくなることへの抵抗感がまだ強いことを示唆しているかもしれません。市販薬で対応できる範囲を広げることは、セルフメディケーションを促進する上で重要ですが、その負担を全て個人に求めることには慎重な意見が多いようです。

高額医療費になりやすい病気への補助を優先すべき?「もしもの時」への備えを重視する声
さらに、将来、医療サービスが縮小され、一部の病気で自己負担金が増える場合、どのような病気への補助を優先すべきか、という問いも投げかけられました。これは、病気の種類によって治療費が大きく異なる現実を踏まえた、非常にデリケートな問題です。特に、高額な治療が必要となる病気と診断された皆さんにとっては、この結果は今後の治療計画を立てる上で大きな意味を持つでしょう。
結果として、約7割もの人が「がんや希少疾患など、かかる人は少ないが、医療費が高額になりやすい病気」への補助をより優先すべきだと回答しました。一方で、「生活習慣病や風邪など、多くの人がかかるが、医療費が比較的安い病気」への補助を優先すべきだと回答した人は約3割にとどまっています。

この結果は、多くの人が、特に経済的負担が大きい病気に対して、社会全体で支えるべきだと考えていることを強く示しています。がんや希少疾患のような、治療が長期にわたり、かつ高額な費用がかかる病気と診断された皆さんにとっては、この結果は希望の光となるのではないでしょうか。経済的な心配が少しでも軽減されることで、治療に専念できる環境が整うことは、患者さんにとって非常に重要です。
この回答の割合は、定期的な通院の有無によっても大きな差は見られませんでした。これは、病気の種類や自身の通院状況に関わらず、高額医療費になりやすい病気への支援を優先すべきだという認識が、国民全体で広く共有されていることを示していると言えるでしょう。誰もが「もし自分が高額な治療が必要な病気になったら…」という不安を抱えているからこそ、いざという時のセーフティネットを重視する声が大きいのかもしれません。
病気と向き合う私たちにできること、そしてこれからの医療の未来のために
今回の調査結果を通して、日本の医療が抱える課題や、それに対する国民の意識が少し見えてきたかと思います。病気で困っている皆さんにとって、これらの情報は決して他人事ではありません。むしろ、皆さんの切実な声が、この調査結果の背景にあると言っても過言ではないでしょう。
では、私たちはこの現状をどう捉え、これからどう行動していけば良いのでしょうか。病気と向き合う中で、少しでも前向きに、そして安心して医療を受け続けるために、私たちにできることを考えてみましょう。
1. 自分の健康に「もっと」関心を持つことの大切さを再認識する
健康管理の意識は高いものの、健診受診率にギャップがあることが示されました。病気と診断された今だからこそ、日々の健康管理がいかに大切か、身をもって感じているはずです。定期的な健診はもちろん、自分の健康データを記録して体の変化に気づく、といった習慣は、病気の再発防止や合併症予防にも繋がります。例えば、血圧や血糖値、体重などを毎日記録するだけでも、体の変化に敏感になれますし、医師に正確な情報を提供できます。
2. 医療に関する情報を正しく理解し、賢く選択する力を養う
医療サービスや制度の将来像については、様々な意見があります。ジェネリック医薬品の利用促進や、高額医療費になりやすい病気への補助優先など、具体的な議論が進んでいます。これらの情報にアンテナを張り、自分自身の治療や生活にどう影響するかを理解することは、納得のいく医療を受ける上で不可欠です。インターネットの情報だけでなく、信頼できる医療機関や専門家からの情報にも耳を傾け、積極的に学ぶ姿勢が大切です。
3. 医師とのコミュニケーションを深め、共に治療を進める意識を持つ
自分の症状や不安、治療に対する希望などを医師に伝えることは、適切な治療を受けるために非常に重要です。日々の健康記録を共有したり、疑問に思ったことは積極的に質問したりと、医師との対話を大切にしましょう。もし、症状をうまく伝えられないと感じる場合は、事前にメモにまとめておくのも良い方法です。医師も患者さんからの情報が多ければ多いほど、より的確な診断や治療方針を立てやすくなります。
4. 医療制度への関心を高め、社会全体で支える意識を持つ
「制度決定への市民参加の度合い」への満足度が低いという結果は、私たちがもっと医療制度に関心を持ち、意見を表明する機会を求めるべきだというメッセージかもしれません。医療政策は、私たちの未来の健康を左右するものです。日本医療政策機構のようなシンクタンクが公表する情報に目を通すなど、まずは「知る」ことから始めてみませんか。そして、可能であれば、そうした議論に参加する機会があれば、積極的に声を上げていくことも重要です。
さいごに:みんなで支える医療の未来
病気と向き合うことは、時に孤独を感じるかもしれません。しかし、日本の医療は、多くの人々の努力と、私たち国民一人ひとりの支えによって成り立っています。今回の調査結果は、そんな日本の医療の現状と、私たちが未来に向けてどう考えているかを映し出す鏡のようなものです。
医療の質を保ちながら、誰もが安心して医療を受けられる社会を維持していくためには、私たち一人ひとりが「自分ごと」として医療制度について考え、行動していくことが大切です。病気を抱える皆さんの声は、医療制度をより良くしていく上で、最も力強い原動力となります。
今回の記事が、病気で困っている皆さんが、日本の医療の未来について考えるきっかけとなり、少しでも前向きな気持ちで日々の治療や生活と向き合える一助となれば幸いです。私たちは一人ではありません。みんなで支え合い、より良い医療の未来を築いていきましょう。
もっと詳しく調査結果を知りたい方は、日本医療政策機構のウェブサイトをご覧ください。
https://hgpi.org/research/hc-survey-2026.html
