医療現場の「困った」をAIが解決する時代へ
日本の医療現場は、人手不足や日々の業務の複雑さなど、たくさんの課題を抱えています。そんな中で、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、つまりデジタル技術を使って医療のあり方そのものを変えていこうという動きが加速しています。その中心にあるのが、AI(人工知能)の活用です。
東大発のすごいAIが登場!医師国家試験でGPT-4oを上回る実力
東京大学の松尾・岩澤研究室では、さくらインターネット株式会社、株式会社ELYZA、株式会社ABEJA、理化学研究所、そして複数の医療機関と協力して、日本語に特化した医療AI「Weblab-MedLLM」を開発しました。
このAIがどれくらいすごいかというと、なんと2025年の医師国家試験ベンチマークで、あの有名なOpenAI社の「GPT-4o」や「OpenAI-o1」を上回る93.3%という、驚異的な正答率を記録したんです!

この「Weblab-MedLLM」は、たくさんの医学論文や医療に関する文章を学習することで、日本国内の医療制度に関する深い知識を身につけています。だから、既存のAIモデルでは答えられなかったような難しい問題にも、正確に答えることができるんですよ。
さらに、外部の知識データベースを参照する技術(RAG)や、多数決で回答精度を高める技術(majority voting)を組み合わせると、正答率は最大で約98%にまで向上することも確認されています(ただし、図の参照が必要な問題や計算問題は除く)。
この結果は、日本のAI技術が世界トップレベルであることを証明するだけでなく、高度な専門知識が必要な医師国家試験レベルの問題にも、AIが極めて高い精度で回答できることを示しています。

AIが電子カルテを「賢く」整理する!医療現場のDXの具体的な一歩
医療現場では、日々膨大な情報が電子カルテに記録されています。しかし、病院ごとに書き方が違ったり、同じ病気や検査でも表現が異なったりすることが多く、情報をまとめて活用するのが大変なんです。
そこで「Weblab-MedLLM」は、この電子カルテのデータを厚生労働省が定める「標準名称」に自動で変換するタスクにも挑戦しました。例えば、感染症や検査の名称を、AIが正しい標準名称に導き出すというものです。
その結果、既存のAIモデルでは難しかった問題に対しても、この医療特化型AIは高い精度で正しい標準名称を導き出すことができました。具体的には、F1スコアで85%という高い精度で変換が可能であり、これは国内外の他のLLM(大規模言語モデル)の性能を大きく上回っています。

この技術が進めば、これまで人手で一つ一つ確認していた作業が自動化され、医療現場のDXが大きく前進することになります。電子カルテのデータが標準化されることで、病院間の情報連携がスムーズになったり、より多くのデータを集めて新しい治療法の研究に役立てたりできるようになるでしょう。


このAIが私たち患者にもたらす未来:どんな良いことがあるの?
この医療特化型AIの進化は、私たち患者にとっても大きなメリットをもたらす可能性があります。
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待ち時間の短縮: 医療従事者の業務が効率化されれば、診察や検査の待ち時間が減るかもしれません。
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診断の質の向上: AIが医師の診断をサポートすることで、より正確で迅速な診断につながる可能性があります。
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新しい治療法の開発促進: 電子カルテデータの標準化や分析が容易になることで、新薬や新しい治療法の研究開発が加速し、私たち患者のもとに早く届くようになるでしょう。
例えば、製薬企業が治験患者を探したり、病気のデータを集めたりする作業が自動化されれば、日本の創薬力が向上し、難病に苦しむ人々にとって画期的な治療法が生まれる可能性もきっと高まるでしょう。
研究者向けの対話型AIサービスも公開中!
松尾・岩澤研究室では、今回の研究成果をさらに評価し、研究を進めるために、開発したモデルを利用できる対話型AIサービスを研究目的限定で公開しています。
このサービスは、さくらインターネット株式会社の「さくらのAI Engine」上にデプロイされており、チャット形式で医学知識に関する質問をしたり、医学試験の問題を解かせたりすることが可能です。
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公開期間: 2026年3月5日〜2026年8月31日
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質問の例:
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「介護保険による機能訓練で正しいのはどれか。a:介護福祉士が実施する。 b:利用者は減少している。 c:医師の指示が必要である。 d:家事動作訓練が含まれる。 e:特定機能病院で実施される。 a,b,c,d,eの中から1つ選びなさい。考察した後、最後に[ans][/ans]タグで囲った回答を出力しなさい。ansタグ内には選択肢の文字のみを出力しなさい。」
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「HPVワクチンは安全ですか?」
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【重要なお願い】
このプログラムは、診断行為、診療行為、治療行為に用いることはできません。あくまで研究目的のサービスであり、医療に関する最終的な判断は必ず専門の医療従事者にご相談ください。
利用を希望される方は、利用規約をよくご確認の上でご利用ください。また、今後の研究プロジェクトのために、サービス上に入力された質問やAIの回答、フィードバックのログなどが、このプログラムの学習に利用される可能性があることもご了承ください。
対話型サービスURL:
https://weblab-medllm-qwen-25-109b-instruct.medllm.weblab.t.u-tokyo.ac.jp
(利用規約はアクセス時に表示されます)
東京大学 松尾・岩澤研究室ってどんなところ?
東京大学 松尾・岩澤研究室は、「知能を創る」ことをビジョンに掲げ、ディープラーニングの研究を推進している研究室です。世界モデルやロボット研究、大規模言語モデル、脳とAIに関する研究など、AIの最先端を走り続けています。基礎研究だけでなく、その成果を社会に還元することにも力を入れており、企業との共同研究や学生起業家の育成支援なども積極的に行っています。
まとめ:医療の未来を明るくするAIの可能性
今回発表された日本語版医療特化型LLMは、日本の医療現場が抱える多くの課題を解決し、私たち患者の医療体験をより良いものに変える大きな可能性を秘めています。医師国家試験での好成績や、電子カルテデータ標準化への貢献は、その第一歩と言えるでしょう。
このAIが、将来的に医療従事者の負担を減らし、私たちが安心して医療を受けられる社会の実現に貢献してくれることを期待せずにはいられません。これからのAIと医療の発展に、ぜひ注目していきましょう!
