PMSとPMDDって、どんなもの?
まずは、PMSとPMDDについて、簡単に確認しておきましょう。
月経前症候群(PMS)
月経前(多くは排卵後から月経が始まる前)に、心と体にさまざまな不調が繰り返し現れる状態を指します。月経が始まると、これらの症状は軽くなるのが特徴です。
月経前不快気分障害(PMDD)
PMSの中でも、特に気分の落ち込みやイライラ、不安といった心の症状が強く出て、日常生活に大きな支障をきたしてしまう状態のことです。
大規模研究で、月経前のつらい症状の「背景」が見えてきた!
国立成育医療研究センターと、月経管理アプリ『ルナルナ』を運営する株式会社エムティーアイは、約7,000人もの『ルナルナ』利用者さんのデータを使って、PMSやPMDDにどんな背景や心理的・生活状況が関係しているのかを、とても詳しく調べました。
この研究は、アプリの記録と質問票を組み合わせることで、一人ひとりの月経前症状と心理社会的要因を多角的に分析した、とても大規模なものです。
どんな人が研究に参加したの?
全国で多くの人が利用している月経管理アプリ『ルナルナ』の利用者さんが対象です。月経前症状の回答内容に基づいて、参加者さんは「対照群(症状が少ない人たち)」「PMS群」「PMDD群」の3つのグループに分けられました。解析の対象となったのは合計6,966人で、そのうちPMSの人が23%、PMDDの人が10%でした。
研究でわかった主なこと
それでは、具体的にどんなことが明らかになったのか、見ていきましょう。
この研究では、PMSやPMDDが単に月経前だけの問題ではなく、もっと広い範囲の要因と関連していることが示唆されました。

上のグラフは、対照群、PMS群、PMDD群のそれぞれで、月経症状のスコア、心理的苦痛を感じている人の割合、睡眠の質が悪い人の割合、そしてワークライフバランス(家庭でのストレスが仕事に影響する度合い)を比較したものです。PMDD群は全ての項目で最も高い数値を示しており、症状が生活の質に大きく影響していることがわかります。
共通して関連が見られた要因
PMSとPMDDの両方で、次のような要因との関連が見られました。
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現在・過去の喫煙: たばこを吸っている、または過去に吸っていた経験がある人は、PMS/PMDDに該当する可能性が高い傾向がありました。
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逆境的小児期体験(ACEs)が多い: 「逆境的小児期体験」とは、子どもの頃に経験したつらい出来事(例えば、家庭内暴力など)を指します。このような体験が多いほど、PMS/PMDDに該当する可能性が高い傾向が見られました。
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低いヘルスリテラシー: 「ヘルスリテラシー」とは、自分の健康に関する情報を理解し、適切に活用する能力のことです。ヘルスリテラシーが低いほど、PMS/PMDDに該当する可能性が高い傾向がありました。
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不適応的ストレスコーピング: 「不適応的ストレスコーピング」とは、ストレスにうまく対処できていない状態や、望ましくないストレス対処法を指します。この傾向が強いほど、PMS/PMDDに該当する可能性が高い傾向が見られました。
これらの結果は、PMSやPMDDが、単なるホルモンバランスの問題だけでなく、子どもの頃の経験や健康に関する知識、ストレスへの向き合い方など、さまざまな生活背景や行動と深く結びついている可能性を示唆しています。
PMSで特徴的だった関連
- 高リスク飲酒: 1日に純アルコール20g(ビールなら500ml缶1本程度)を超える量を飲む「高リスク飲酒」は、PMSと関連が見られました。
PMDDで特徴的だった関連
- 婚姻歴や同居の子どもあり: PMDDでは、結婚していることや、同居の子どもがいることとの関連が示唆されました。
心理社会的負担も明らかに
PMSとPMDDは、心身に大きな負担をかけていることも明らかになりました。
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心理的苦痛と睡眠不良: どちらのグループでも、心のつらさや睡眠の質の低下が顕著でした。
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ワークライフバランスの悪化: 仕事のストレスが家庭に影響したり、家庭のストレスが仕事に影響したりする「ワークライフバランスの悪化」も、PMS/PMDDとの関連が強い傾向が見られました。

上の図は、PMS群とPMDD群が対照群と比較して、それぞれの要因でどれくらいリスクが高いか(相対リスク比)を示したものです。月経症状スコア、心理的苦痛、睡眠の質不良、ワークライフバランスの全てで、PMDD群が最も高いリスク比を示しており、これらの症状がPMDDと強く関連していることがわかります。
月経症状全体の負担
PMSやPMDDは、月経前の症状が特徴的ですが、この研究では、対照群と比べて月経症状全体の負担も非常に高いことが示されました。これは、PMSやPMDDの人は、月経前だけでなく、月経に関連する症状全体がつらいと感じている可能性を示唆しています。
(注)この研究は、特定の要因と症状の関連性を見つける「観察研究」です。そのため、「〇〇が原因でPMS/PMDDになる」といった直接的な因果関係を証明するものではないことをご理解ください。
研究者からのメッセージ:もっと包括的なサポートを
この研究結果について、発表者からは次のようなコメントがありました。
「PMS/PMDDは、月経前の症状だけでなく、月経時の症状負担も大きく、睡眠、心理的ストレス、ワークライフバランス、ヘルスリテラシー、ストレスコーピング、喫煙や過去の逆境体験など、心理社会的・行動的な要因と幅広く関連する可能性を、大規模な一般集団データで示唆しました。月経前症状への支援は、症状をコントロールすることに加え、生活背景や心理社会面を含む統合的アプローチが重要と考えられます。」
つまり、月経前のつらい症状を和らげるためには、症状そのものだけでなく、あなたの生活習慣や心の状態、過去の経験など、もっと広い視点からアプローチすることが大切だということですね。あなたのつらさは、決して「気のせい」ではありませんし、一人で抱え込む必要もないのです。
論文情報
今回の研究成果は、国際学術誌『International Journal of Gynecology & Obstetrics(IJGO)』に掲載されています。
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タイトル: Psychosocial and menstrual correlates of premenstrual disorders: A community-based study
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執筆者: 糸井しおり1,2,3、三瓶舞紀子1,4、辰巳嵩征2,5、大須賀穣3,6,7、甲賀かをり3,8、鳴海覚志9,10、森崎菜穂1,11
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掲載誌: International Journal of Gynecology & Obstetrics
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DOI: 10.1002/ijgo.70752
まとめ
今回の研究は、PMSやPMDDが、私たちの心や体、そして生活環境と密接に関わっていることを示してくれました。もしあなたが月経前の不調で悩んでいるなら、この研究結果が、あなたの症状を理解し、適切なサポートを見つけるための一助となることを願っています。
一人で抱え込まず、医療機関や信頼できる人に相談することから始めてみませんか? あなたのつらさは、きっと理解されるはずです。
