花粉症対策、みんなはどうしてる?意外と多い「食習慣」の意識
2026年1月、全国の20代以上の花粉症の男女500名を対象に行われた調査で、花粉症対策として実践していることが明らかになりました。
一番多かった対策は「マスクを着用する」(329人)で、全体の約89%(443人)が「マスクを着用する」「花粉飛散量が多い日の外出を控える」といった、花粉を物理的に避ける対策を取っていました。また、「薬を服用している」などの医療的な対策をしている人も約38%(191人)にのぼります。
しかし、この調査で注目すべきは、なんと4人に1人(124人)が、特定の食品や栄養素を意識的に摂るなど、食事での対策を意識しているという結果です。具体的には、「発酵食品を意識して摂取している」(77人)、「腸内環境を整えることを意識している」(61人)、「食物繊維を多く含む食品を意識して摂っている」(46人)といった回答が見られました。中には「にごり酢を摂取している」(8人)という人もいるようです。

この結果から、多くの人が日々の食生活が花粉症の症状に影響を与えることを感じ、積極的に取り組んでいることがわかります。
花粉症は「免疫の過剰反応」!鍵は「腸内環境」にあり
なぜ食習慣が花粉症対策になるのでしょうか?
立川パークスクリニックの院長で、感染症や免疫の専門家である久住英二医師は、花粉症が「免疫が花粉に過剰反応するアレルギー反応の一種」であると説明しています。

久住医師は、「日常の栄養摂取や生活習慣を通じて免疫のバランスを穏やかに整えることが、症状の緩和につながります」と語ります。特に近年は、腸内環境が私たちの健康、そして病気と密接に関わっていることが明らかになっており、腸内細菌の種類やバランスがアレルギー反応にも影響していると考えられているのです。
腸管免疫ってなに?
私たちの体には、口から肛門まで続く「消化管」という一本の管があります。実は、この消化管の内面は、体の内側でありながら外界と接している、とても特別な場所なんです。
食べ物からは栄養をもらう一方で、ウイルスや細菌、カビなどの病原体も侵入してくる可能性があります。そこで体を守るために、消化管の表面は粘液で覆われ、さらにたくさんの免疫組織や細胞が存在し、粘膜の表面には抗体が配置されています。この強力な防御システムが「腸管免疫」と呼ばれ、体を守る最前線の一つとして働いています。
小腸には「パイエル板」という免疫組織があり、T細胞やB細胞、NK細胞といった免疫細胞が集まって、侵入してきた病原体と戦っています。また、大腸には膨大な数の腸内細菌が共存する「腸内細菌叢(腸内フローラ)」が形成されており、病原体の増殖を抑えたり、消化を助けたり、体に必要な栄養素を作ったりしています。この腸内細菌叢は、私たちの免疫機能と深く結びついていて、バランスが整っていると免疫は適切に働きますが、乱れが生じると花粉症のようなアレルギー症状など、体にとって好ましくない反応が起こりやすくなるのです。だから、腸内環境を良好に保つことが、健康を維持する上でとっても大切なんですね。
毎日できる!花粉症対策の食習慣
腸内環境を整えるためには、日々の食生活がとても重要です。ここでは、花粉症の症状緩和につながるかもしれない、食習慣のヒントをいくつかご紹介します。
発酵食品は積極的に摂りたい!酢酸菌にも注目
腸内環境を整える食生活の工夫として、まず挙げられるのが「発酵食品」です。
ヨーグルトや納豆、味噌など、おなじみの発酵食品には、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を改善する働きが期待できます。特に「プロバイオティクス」として知られる乳酸菌は、積極的に摂りたい栄養素の一つです。
最近では、乳酸菌だけでなく「酢酸菌」の有用性も解明されつつあります。酢酸菌は、ろ過する前の“にごり”を残した「にごり酢」や、お茶と糖を混ぜて発酵させて作る「コンブチャ」などの発酵飲料に豊富に含まれています。
酢酸菌が免疫細胞を刺激することで、アレルギー体質に傾いた免疫バランスを調整する可能性が示唆されています。市販の透明なお酢も、短鎖脂肪酸の一つとしてもちろん健康に良いものですが、にごり酢では、にごりの部分にたくさんの酢酸菌が含まれているのが特徴です。
酢酸菌を「腸内環境を整えるための食生活上の選択肢の一つ」として、毎日無理なく取り入れることが健康管理に役立つかもしれません。例えば、サラダや調理に使うお酢をにごり酢に変えるだけなら、手間なく習慣化できます。全国各地の酒蔵では、玄米由来のものや柿やりんごを使ったものなど、個性豊かなにごり酢が造られているので、原材料や製法によって違う香りや味わいを楽しみながら使い分けてみるのも楽しいでしょう。健康を意識して赤酢やにごり酢を取り入れる飲食店も登場しています。
腸の掃除と修復をする短鎖脂肪酸の材料、【食物繊維】
海藻類や野菜に多く含まれる「食物繊維」も、腸内環境を整える上で欠かせない栄養素です。
食物繊維は、人間の消化酵素では分解されにくく、小腸で吸収されずに大腸まで届きます。ここで食物繊維は、腸内に存在する善玉菌の栄養源として利用され、「発酵」が起こります。この発酵の過程で、「酢酸」や「酪酸」、「プロピオン酸」などの「短鎖脂肪酸」が生み出されます。
短鎖脂肪酸は、単なるエネルギー源ではなく、強力な免疫調節因子として機能することが分かっています。特に酢酸には、様々な効果があることが解明されつつあります。
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「IgA抗体」の産生促進
酢酸は、腸管に存在する樹状細胞や上皮細胞の受容体に作用し、B細胞がIgA産生細胞へと分化するのを促進します。IgAは、花粉や食物抗原などの「異物」が粘膜を通り抜けて体内に侵入するのを防ぐ最前線の防御壁です。IgAが適切に分泌されることで、過剰なIgE抗体の反応(アレルギー反応)を未然に防ぐ「免疫排除」がスムーズに行われると考えられています。 -
腸管バリア機能の維持
酢酸は、腸管上皮細胞同士の接着装置であるタイトジャンクションの発現を維持する役割を担っています。このバリアが弱まると、未消化のタンパク質や細菌毒素(LPS)が血中に漏れ出し、全身性の慢性炎症を引き起こすことがあります。これがアレルギー体質を悪化させる要因となる可能性があります。また、酢酸は腸内環境を酸性に保つことで、悪玉菌の増殖を抑え、アレルギー悪化因子である腐敗産物の生成を抑制すると考えられています。 -
「母子間の免疫移行」への関与
近年の研究では、妊娠中の母親の腸内環境と子供のアレルギー発症リスクに強い相関が見つかっており、特に酢酸が注目されています。妊娠中に高食物繊維食を摂取し、腸内での酢酸産生が高まると、胎児の胸腺におけるTreg(制御性T細胞)の分化に関わる遺伝子にエピジェネティックな変化が起こることが示唆されています。これにより、生まれてきた子供が将来、喘息やアレルギー性疾患を発症するリスクを低下させることが動物モデルや疫学調査で報告されています。 -
「腸―肺相関(Gut-Lung Axis)」
腸内で作られた短鎖脂肪酸が血流に乗って肺に到達し、肺の免疫細胞をマイルドに保つことで、喘息の炎症を抑えることが動物モデルなどで確認されています。また、乳幼児期の腸内細菌叢における短鎖脂肪酸の濃度が、将来の食物アレルギー発症リスクと相関するというデータもあります。
前述のにごり酢などに含まれる酢酸菌は、この酢酸を産生する菌の一種でもあり、食物繊維と組み合わせて取り入れることで、腸内環境をより支える一助になると考えられています。
免疫バランスを整える、魚介類に含まれるアミノ酸【タウリン】
さらに、魚介類に多く含まれるアミノ酸の一種「タウリン」の摂取も、花粉症シーズンの体調管理に役立つかもしれません。
タウリンは、免疫細胞の働きを支えるほか、自律神経のバランスを整え、炎症反応を穏やかにする働きが報告されています。アレルギー症状は炎症反応の一種であるため、日常的に魚介類を取り入れる食習慣は、花粉症症状の緩和を含めた体調全体の底上げにつながると考えられます。
例えば、青魚(サバ、イワシ、アジなど)やイカ、タコ、エビ、カニなどにタウリンは豊富に含まれています。魚の西京焼きや、お鍋に塩麹を入れるなどのひと工夫もおすすめです。タウリンは水溶性なので、お鍋ならお出汁に溶けだした栄養素も摂取できて非常に効率的ですよ。
食事だけじゃない!生活習慣も重要な土台
花粉症対策は、食事だけでなく、日々の生活習慣全体を見直すことも大切です。
睡眠と栄養バランスも重要な土台
栄養バランスの取れた食事はもちろんのこと、十分な睡眠と生活リズムの安定は、健康な体を保つ上で非常に重要です。睡眠不足や生活リズムの乱れは、疲労を蓄積させ、自律神経のバランスを崩し、免疫反応が過敏になりやすい状態を招いてしまいます。
就寝・起床時間をなるべく一定に保ち、体をしっかり休ませることが、体調の悪化を防ぐ基本中の基本です。ぐっすり眠って、体の回復力を高めましょう。
“花粉除去系”おすすめ習慣は鼻うがい
セルフケアとして、鼻腔ケアもとても有効です。生理食塩水を用いた鼻うがいは、鼻腔内に付着した花粉を物理的に洗い流し、粘膜への刺激を減らす効果が期待できます。
市販の鼻洗浄器具や専用洗浄液を用いることで安全に行うことができ、薬物療法と併用することで症状のコントロールがしやすくなる場合もあります。最新の研究では、子供でも生理食塩水スプレーを鼻に使うことで、夜間の鼻づまりによる息苦しさが大幅に解消されることが明らかになっています。試してみてはいかがでしょうか。
症状がひどい時は我慢しない!医療の力を借りよう
いくらセルフケアを頑張っても、症状がひどくて日常生活に支障が出ることもあるでしょう。そんな時は、迷わず医療の力を借りることも大切です。
医療による対処
花粉症治療の基本となるのは「薬物療法」です。抗ヒスタミン薬や点鼻用ステロイド薬は、アレルギー反応による炎症を抑え、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状を緩和してくれます。即効性がある一方で、眠気などの副作用や生活への影響もあるため、医師と相談しながら自分に合った薬を選ぶことが大切です。
近年は、「舌下免疫療法」に代表される「免疫療法」も注目されています。これは、アレルゲン(花粉)を少量ずつ体に取り入れて、免疫が過剰に反応しにくい体質へと導く治療法です。スギ花粉のオフシーズンに治療を開始するのが一般的で、5月頃に内科や小児科、アレルギー科などを受診すると相談に乗ってもらえます。根本的な体質改善を目指したい方は、検討してみるのも良いでしょう。
もしかして睡眠時無呼吸症候群?
「鼻がつまって夜中に目が覚める」「午後に眠くなりやすい」といった症状がある方は、もしかしたら「睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」かもしれません。
この病気は、「太っている人の病気」と誤解されがちですが、骨格的に気道が狭い日本人では、肥満のない方でも無呼吸症の人が大勢いることが分かっています。なんと、睡眠評価アプリで「異常なし」と出ても無呼吸症の場合があるのです。今は自宅での簡単な検査で診断できますので、気になる方は一度医師に相談してみることをおすすめします。
花粉症?それとも風邪?感染症との見分け方
花粉症シーズンには、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症と症状が似ている場合があり、見分けることが感染拡大を防ぐためにも重要です。
花粉症は、一般的に透明でさらっとした鼻水やくしゃみ、目のかゆみが中心となることが多いです。一方、感染症では目の症状はなく、数日で鼻水が黄色や緑色に変化し、発熱や喉の痛み、全身のだるさを伴うことが多いでしょう。症状に変化があったり、いつもと違うと感じたら、早めに医療機関を受診してください。
まとめ
花粉症のつらい症状は、日々の生活に大きな影響を与えます。しかし、マスクや薬といった直接的な対策だけでなく、食事や睡眠といった生活習慣、特に「腸内環境」を整えることが、免疫のバランスを穏やかに保ち、症状の緩和につながるかもしれません。
今回ご紹介した発酵食品や食物繊維、タウリンを意識した食生活、そして十分な睡眠や鼻うがいなどのセルフケアを、ぜひ今日から少しずつ取り入れてみてください。そして、症状が強いときは我慢せずに、医療の力を借りることも大切です。
日々のケアと医療のサポートを上手に組み合わせることで、この花粉シーズンを快適に乗り切りましょう!
立川パークスクリニックの公式サイトはこちら: https://tachikawa-pax-clinic.tokyo/
