病院は「健康を学ぶ場」へ!福岡中央病院が目指す「健院」構想

イベントではまず、プロジェクトに参画している福岡中央病院 病院長の横井宏佳先生が登壇し、「福岡中央病院が担う地域の予防医療」についてお話しされました。

スーツを着た男性がマイクを持ち、聴衆の前でジェスチャーを交えながら講演しています。背景には「miSignal」と「すい臓がん 啓発プロジェクト」のロゴが繰り返しデザインされたパネルがあります。

横井先生は、これからの病院の役割を「病気になる前の健康を学ぶ場」である「健院」と位置づけ、医療の知恵を市民の生活に届けることを使命とされているそうです。心筋梗塞やがん、脳卒中など、数多くの病気の診療に携わってきた経験から、「病気を防ぐための知見を皆さんに伝えたい」という強い思いが語られました。

特にがんに関しては、早期発見・早期治療が何よりも大切だと強調されました。早期に見つけて、診断・治療ができれば、助かる命が増えるからです。

横井先生は、尿がんリスク検査「マイシグナル」についても触れ、「『すい臓がんの可能性がありそう』『大腸がんや乳がんの可能性がありそう』など、がんリスクを個別に評価できるのは、今までなかった検査で非常に興味深い」と期待を寄せられました。

さらに、マイシグナルでがんリスクが高いと評価された方々を、福岡中央病院で広く受け入れ、最先端のCT・MRIなどの検査機器で適切なフォローアップを行う体制を整えているとのこと。治療だけでなく、予防や健康づくりの拠点として、福岡の薬院エリアから最先端の予防医療を発信していきたいという熱意が伝わりました。

すい臓がんの厳しい現状と早期発見の重要性

続いて、福岡山王病院 肝胆膵内科・神経内分泌腫瘍センター長の伊藤鉄英先生が、「すい臓がんの現状と課題」と題して講演されました。

青いチェックのスーツを着た男性がマイクを持って話している様子です。背景には「すい臓がん啓発プロジェクト」と「miSignal 尿がんリスク検査」の文字が見え、医療関連のイベントでの講演風景と推測されます。

伊藤先生はまず、福岡県のがん検診受診率が全国的に見て低い現状に警鐘を鳴らしました。胃がん、肺がん、大腸がんなどの検診率が約4割と、他の都道府県と比べても下位に位置しているそうです。「福岡の人たちに、がん検診を受けてくださいと伝える必要がある」という言葉には、地域のがん対策への危機感がにじみ出ていました。

そして、すい臓がんの最も厳しい現実として、「見つかった時には9割以上の方が亡くなる」という事実が語られました。その原因は、発見時にはすでに遠隔転移が進んでおり、治療が追いつかないことにあるそうです。では、どうすれば助かるのでしょうか?伊藤先生は、「早く見つけて切ること。これが一番生存率が高くなる」と明確に述べられました。

具体的には、腫瘍が1cm以下で見つかれば、5年生存率が約80%にまで上がるというデータが示され、いかに早期発見が重要であるかが強調されました。

リスクファクターを知り、自ら検査を申し出る勇気を

早期発見のために特に大切なこととして、伊藤先生は「すい臓がんのリスクファクター」の把握を挙げました。

すい臓がんのリスクファクターをまとめた表です。家族歴、喫煙、飲酒、糖尿病、肥満、慢性膵炎、膵疾患・画像所見などが挙げられ、それぞれの相対リスクや発症率が示されています。膵癌診療ガイドライン2022年版からの情報です。

糖尿病の人、慢性膵炎の人、嚢胞を持っている人、すい臓がんの家系の人など、リスクファクターを持つ人は必ずチェックが必要であり、「すい臓を調べてほしいと、自ら申し出るようにしてほしい」というメッセージは、病気で不安を抱える人々にとって、一歩踏み出すための大きな後押しとなるでしょう。

尿中マイクロRNAによるすい臓がん検出の可能性

さらに、伊藤先生は近年研究が進む「尿中マイクロRNA」によるすい臓がん検出の可能性についても語られました。2024年にノーベル賞を受賞したマイクロRNAは、がん細胞と正常細胞でパターンが全く異なるため、がん細胞由来のマイクロRNAを捉えることで、早期にすい臓がんを発見できるという画期的な技術です。

このマイクロRNA検出技術は、ステージ0・ステージⅠのすい臓がんにおいて、感度・特異度が90%以上という素晴らしい成果を一流の医学雑誌「Lancet」の姉妹紙で発表しているとのこと。新しい検査技術が、すい臓がんの早期発見に大きな希望をもたらしていることが分かります。

伊藤先生も、マイシグナルでがんリスクが高いと評価された方々については、ご自身の外来でフォローアップしていく計画を進めていると語り、医師としての強い責任感を示されました。

最先端のがん早期発見技術「マイシグナル」の可能性

最後に、Craif株式会社CTOの市川氏が、「最先端のがん早期発見技術のご紹介」と題して講演しました。

マイクを手にスピーチをする若い男性の姿。背景には「すい臓がん啓発プロジェクト」や「尿がんリスク検査 miSignal」と書かれたバナーがあり、医療関連のイベントでの登壇風景と考えられる。

市川氏は、Craifのミッションを「がんの早期発見・早期治療が当たり前の社会の実現」と述べ、そのために尿からマイクロRNAを抽出し、AIで解析することでがんを早期発見できる検査を開発していると説明しました。

10種類のがんを一度に判定する「マイシグナル・スキャン」

Craifが提供する尿がんリスク検査「マイシグナル・スキャン」は、すい臓がんを含む10種類のがんのリスクを、一度の検査でがん種別に評価できるのが特徴です。現在、全国約2,500近くの医療機関に導入されており、その普及が急速に進んでいることがうかがえます。

青いパッケージの「miSignal. SCAN」という製品の箱が写っています。高精度なAIでがんリスクを早期発見できることを示唆するテキストが記載されており、医療やヘルスケア関連の商品と考えられます。

検査後のフォローアップ体制の重要性

市川氏は、検査を受けた後のフォローアップ体制の重要性も強調しました。福岡エリアでは、横井先生や伊藤先生の協力のもと、マイシグナルでがんのリスクがあると評価された場合でも、しっかりとフォローアップを受けられる体制が整えられる予定とのこと。安心して検査を受け、もしもの時にも適切な医療につながる仕組みづくりが進められています。これは、不安を抱える方々にとって、非常に心強いニュースではないでしょうか。

すい臓がん啓発プロジェクト in 福岡とは

今回開催されたイベントは、「すい臓がん啓発プロジェクト in 福岡」の一環として行われました。このプロジェクトは、「すい臓がんが当たり前に早期発見される社会をつくる」というビジョンのもと、福岡の地域課題に向き合い、医療機関や薬局チェーン、企業と連携して発足したものです。

プロジェクト発足の背景

日本では2人に1人ががんに罹患する時代となり、がんの予防と早期発見は社会全体の重要な課題です。特に福岡県は、がん検診受診率が全国下位にとどまっており、検診行動を促すきっかけが十分に届いていないという課題があります。その中でもすい臓がんは5年生存率がわずか8%と非常に厳しく、2023年にはがん種別死亡者数で胃がんを抜いて全国3位となりました。

すい臓がんは初期症状がほとんどなく、従来の検査では早期発見が極めて困難とされています。しかし、腫瘍が1cm以下の段階で発見できれば、5年生存率を80%以上に向上できることが分かっています。この重要な情報が一般に十分知られていない現状を変えるため、本プロジェクトは立ち上がりました。

主な取り組み

このプロジェクトでは、以下のような取り組みを通じて、すい臓がんの啓発を推進しています。

  • 消費者向け啓発イベントの企画・運営

  • 薬局店頭での啓発セミナーの実施

  • 対策型検診(がん検診)の受診案内と受診促進

プロジェクトの詳しい内容はこちらからご覧いただけます。
https://suigan.jp/

Craifの福岡での取り組み

Craifは、2018年に創業したバイオAIスタートアップです。2017年に名古屋大学と九州大学の研究者が発表した、尿中マイクロRNAを用いたがん早期発見に関する論文を技術ルーツとしています。2022年には尿がん検査「マイシグナル」をリリースし、現在ではすい臓がんを含む10種類のがんをステージⅠから評価できるまでに技術が発展しています。

福岡県では、九州大学や九州大学別府病院、九州がんセンター、鹿児島大学などと共同研究を進めています。また、「マイシグナル」は県内70カ所以上の医療機関で導入されているほか、そうごう薬局、ドラッグストアモリ、新生堂薬局、ドラッグイレブンなど500店舗以上のドラッグストア・調剤薬局でも導入が急拡大しており、福岡を起点とした早期発見の普及が加速しています。

今後も、福岡県の医療機関、企業、大学、行政など多様なステークホルダーと連携し、地域全体でがん早期発見モデルの構築を進めていくとのことです。

あなたの健康を守る「マイシグナル・スキャン」

青いパッケージの「miSignal. SCAN」という製品の箱が写っています。高精度なAIでがんリスクを早期発見できることを示唆するテキストが記載されており、医療やヘルスケア関連の商品と考えられます。

「マイシグナル・スキャン」は、尿中のマイクロRNAを抽出し、AIで解析することで、すい臓がんを含む10種のがんリスクを、がんの種類別に、ステージ1から評価する検査です。採尿するだけで、体に負担なく検査できるのが大きなメリットです。

詳しい情報はWebサイトで確認できます。
https://misignal.jp/

※注意点
「マイシグナル・スキャン」は医療機器ではありません。解析した情報を統計的に計算することでリスクを判定するものであり、医療行為としてがんに罹患しているかどうかの「診断」に代わるものではありません。リスクが低いと判定された場合でも、がんがない、または将来がんにならないとは限りません。また、卵巣がん・乳がんは女性のみ、前立腺がんは男性のみ検査対象となります。

まとめ

今回のイベントを通じて、すい臓がんの早期発見がいかに重要であるか、そしてそのための最先端技術や地域医療機関の連携が、病気で困っている人々に新たな希望を与えていることが強く感じられました。

「見つかった時には手遅れ」という悲しい状況をなくし、誰もが安心して天寿を全うできる社会を目指して、このような取り組みがこれからも広がっていくことを期待しましょう。少しでも不安を感じたら、ぜひこの機会に、ご自身のがんリスクについて考えてみてくださいね。