日本人の睡眠事情と深刻な影響
OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分。これはOECD加盟国の平均8時間18分と比べて、なんと約1時間も短いんです。たった1時間と思うかもしれませんが、この睡眠不足が積み重なることで、経済的な損失は年間15兆円を超えるとも試算されています。想像してみてください、眠れない日々が続くと、仕事の効率が落ちたり、集中力が続かなくなったり、イライラしやすくなったり…心身ともに大きな負担がかかりますよね。
近年では、ただ睡眠時間を確保するだけでなく、「質の良い睡眠」への関心が高まっています。しかし、厚生労働省の調査では、「睡眠で休養が十分とれていない」と感じている人が約2割もいるのが現状です。さらに、夏の猛暑や冬の厳しい寒さなど、気候変動による環境要因も私たちの快適な睡眠を妨げる大きな要因となっています。
そんな中、睡眠をサポートする「スリープテック」市場は、2027年には160億円規模にまで成長すると予測されており、多くの人がより良い睡眠を求めていることがわかります。
住宅環境と睡眠の質を結びつける画期的な実証実験がスタート!
「もっとぐっすり眠りたい!」そんな願いを叶えるために、この度、注文住宅メーカーの小林住宅株式会社と、建築・不動産総合企業の株式会社創建が、睡眠研究の第一人者である筑波大学の柳沢正史氏と共同で、ある実証実験をスタートさせました。その目的は、住宅環境が睡眠の質にどのような影響を与えるのかを科学的に検証し、最終的には「究極の睡パ(=睡眠パフォーマンス)住宅」の開発を目指すというもの。
この実験には、世界トップレベルの睡眠研究機関である筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)をはじめ、慶應義塾大学川久保研究室、そして睡眠ソリューションを提供する株式会社S’UIMINが参画しています。まさに、睡眠と住まいのプロフェッショナルたちが集結した、夢のようなプロジェクトですね。

快眠を左右する4つの環境因子
快適な睡眠には、「温度」「音」「換気」「光」という4つの環境因子が深く関わっています。例えば、寝苦しい夜にエアコンをつけっぱなしにすると体が冷えすぎたり、外の騒音で目が覚めてしまったり、寝室が明るすぎてなかなか寝つけなかったり…心当たりがある方もいるのではないでしょうか。
この実証実験では、これらの要素を住宅環境としてどのように整えることが、睡眠の質向上につながるのかを徹底的に検証します。
住宅性能が異なる2棟の実験棟
今回の実験のために、なんと2棟の特別な住宅が建築されました。これらの住宅は、同じ立地条件で、間取りやインテリアなどの見た目は全く同じです。しかし、睡眠の質に影響を与える「温度」「音」「換気」「光」に関わる住宅性能だけが意図的に変えられています。
具体的には、小林住宅と創建が提案する「外断熱工法」を用いた高性能な住宅と、一般的な基準を満たした住宅の2種類が用意されました。
徹底したデータ分析で睡眠の質を評価
実験では、日ごろから睡眠に悩みを持つ男女20名が被験者となり、それぞれの住宅に2~3泊ずつ宿泊します。その際、株式会社S’UIMINが提供する脳波とAIによる睡眠計測デバイス「InSomnograf(インソムノグラフ)」を用いて、睡眠時の脳波を測定します。

評価項目は多岐にわたります。例えば、実際に眠っていた時間を示す「総睡眠時間」、ベッドに入ってから眠るまでの時間や、夜中に目が覚めてしまう回数、心身の回復に重要な「深睡眠」の時間など、脳波データから睡眠の量と質が客観的に評価されます。さらに、睡眠後のアンケートによる「主観的な評価」や、心拍変動の計測を通じた「リラックス度」なども分析されます。
加えて、住宅内の温度、湿度、照度、CO2濃度といった室内環境も同時に計測されるため、住宅環境と睡眠の質の関係が総合的に検証されることになります。

この実験は、外気温の影響を受けやすい冬季(2025年12月14日~2026年3月13日)に実施され、さらに気温が上昇する本年夏季にも同様の実験が行われる予定です。季節変動の影響も含めた研究結果は、2026年10月に発表される見込みです。これは、私たちの未来の睡眠にとって、非常に楽しみなニュースですね。
「外断熱工法」が快眠をサポートする理由
この実証実験で注目されている「外断熱工法」とは、どのようなものなのでしょうか?
外断熱工法は、屋根や床下を含め、建物全体を断熱材ですっぽりと外側から包み込む断熱方法です。この工法には、以下のような特長があります。
-
室温が安定しやすい: 外気の温度が室内に伝わりにくいため、冬は暖かさが逃げにくく、夏は外からの熱が入りにくいです。これにより、一年を通して室温が安定しやすくなります。
-
高い遮音性: 連続した断熱材による高い気密性によって、外部の音が伝わりにくく、静かな環境を保ちやすくなります。
-
計画的な換気: 高い気密性により、計画的な換気による空気循環が行いやすく、室内の空気環境を良好に保てます。
これらの特長は、「温度」「音」「換気」といった睡眠に影響を与える環境因子を理想的な状態に保つことに大きく貢献すると考えられています。

共同研究に参画する専門家たち
この画期的な実証実験を支えるのは、各分野のトップランナーたちです。
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)
睡眠覚醒機構の解明を目指し、基礎から臨床までを網羅する世界トップレベルの睡眠医科学研究拠点です。「睡眠覚醒制御機構の解明」「睡眠障害と、それらに関連する疾患の病態の解明」「睡眠障害治療法の開発」の3つのミッションを掲げ、研究活動を行っています。
詳細はこちらをご覧ください: 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構
柳沢正史 教授
1960年東京生まれ。筑波大学大学院修了、医学博士。米国科学アカデミー正会員。1988年に血管制御因子エンドセリンを、1998年に睡眠・覚醒を制御するオレキシンを発見しました。文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)を設立し、株式会社S’UIMINを起業するなど、睡眠研究の最前線で活躍されています。Pokémon Sleepの監修も務めています。
株式会社S’UIMIN
柳沢正史氏が起業した筑波大学発のスタートアップ企業です。睡眠時の脳波を測定してAIで解析する睡眠計測サービス「InSomnograf(インソムノグラフ)」を筑波大学と共同開発し、提供しています。睡眠専門企業として、研究用資材の販売、医療機関向け睡眠検査、法人向け健康経営支援など、多岐にわたる事業を展開しています。
詳細はこちらをご覧ください: 株式会社S’UIMIN
小林住宅株式会社
外断熱住宅供給のパイオニア企業で、関西エリアにおける外断熱住宅供給実績No.1を誇ります。省エネルギーやCO2削減等へ貢献する優れた住宅を表彰する「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー2024」で大賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
詳細はこちらをご覧ください: 小林住宅株式会社
株式会社創建
建売住宅・マンションの分譲、リフォーム、賃貸、建築請負、設計監理など幅広く手掛ける建築・不動産総合企業です。外断熱工法を用いた高断熱・高耐久な木造住宅ブランド「Kurumu」を開発しています。
まとめ
今回の実証実験は、私たちの「眠り」と「住まい」の関係を科学的に解き明かし、より質の高い生活を送るための大きな一歩となることでしょう。もしあなたが今、睡眠の悩みで困っているのであれば、この「究極の睡パ住宅」の研究結果が、きっとあなたの未来の快眠につながるヒントを与えてくれるはずです。2026年10月の研究結果発表が、今から待ち遠しいですね!
